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日本時間の2025年9月28日 9:00、イランに対する国連制裁が自動的に再発動された。核合意の枠組みから外れた核活動が続くと判断され、安保理での調整は土壇場で不調に終わった。核関連や武器取引への網が一括で戻り、協力停止を示唆するイランと欧米の対立が一段と深まる局面に入った。
「最後の30日間」が終わった日
発端は2025年8月28日、英国・フランス・ドイツの外相が安保理宛てに送った一通の書簡だった。核合意の重大な不履行を理由に、制裁を自動復活させる「スナップバック」を正式に起動した。起動から満30日で復活する仕組みのため、各国は期限までの外交余地を探ったが、決定打は生まれなかった。
9月19日には、制裁解除の継続を模索する決議案が安保理で否決された。核合意の維持を掲げた案だったが、加盟国の足並みはそろわず、決議に必要な賛成を集められなかった。これで「自動復活」に向けた時計の針は止まらず進むことになった。
9月26日には、ロシアと中国が復活の先送りを提案する別案を提示したが、採決は否決に終わった。延長という「時間稼ぎ」の道も閉じ、残された選択肢は極めて限られた。こうして迎えた期限の朝、安保理決議で解除されていた制裁は一括して戻り、国際的な圧力の位相が切り替わった。
日本時間の9月28日 9:00、安保理の関連ページは制裁復活を反映する更新が行われ、欧州の三国外相は共同声明で「復活は外交の終わりではない」と記した。イランが査察受け入れや協議復帰に応じるなら、復活措置の停止も検討するとしつつ、まずは履行の担保を優先すると強調した。
何が戻り、どこが締まるのか
再発動で戻るのは、核燃料サイクルに関わる活動の広範な制限である。ウラン濃縮や再処理、それに関係する設備や技術の移転が禁じられ、関連資機材の供給も厳しく制御される。弾道ミサイル関連の活動や試射も制裁対象に含まれ、国際的な拡散リスクの芽を摘む設計が再び生きることになった。
武器の輸出入には包括的な禁輸措置が課され、関連する個人や団体への渡航禁止と資産凍結も復活する。各国当局は、禁制品の積み荷の拿捕や処分を認められ、監視と取り締まりの実効性が上がる。要するに、核・ミサイル・武器の三層で「止める」「渡さない」「動かさない」を同時に効かせる構造が戻ったといえる。
この枠組みは、核合意によって段階的に解除されていた網を丸ごと元に戻す点に特徴がある。合意順守が崩れた場合は自動的に復帰するという設計そのものが安全弁であり、安保理における否決や拒否権の駆け引きに左右されない。今回の経緯は、その安全弁が予定通り作動した典型例となった。
テヘランの反発と、残された交渉の余地
制裁の再発動に対し、イラン政府は強く反発している。イランは復活の際にはIAEAへの協力を「事実上停止する」との構えを早い段階から示し、核活動の透明性は一段と低下するおそれがある。国内の強硬派からはNPT離脱を求める声も漏れるが、政府首脳は同条約の枠内にとどまる意向も示しており、内部の温度差がにじむ。
一方、欧州の三カ国は「復活＝外交の断絶」ではないと繰り返す。査察の全面再開や高濃縮在庫の問題解決、対話復帰に応じるなら、時限的な猶予も含め柔軟に対応する構えだ。安保理での先送り案が退けられたことで時間は厳しくなったが、交渉の窓は細くとも開いている。要は、信頼回復の第一歩を誰がいつ踏み出すかにかかっている。
地域情勢の緊張も無視できない。初夏の軍事行動でイラン国内の核関連施設が打撃を受けた記憶は新しく、相互不信は深い。経済面では米国の単独制裁が長く続き、外資の撤退が進んだため、イラン当局は「今回の影響は限定的」と強調する。ただ、資金決済や調達の目詰まりが再び強まる現実は厳しく、庶民の不安は消えない。制裁の圧力が核活動の抑制につながるのか、それともさらなる硬化を招くのか。次の一手は、透明性の回復と検証の受け入れという初歩的な合意から始まるはずだ。
