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会議室に配られた紙束がめくられ、矢印で結ばれた図が視線を集めた。文部科学省が国立大学法人などに向けた改革の基本方針を示し、大学は自前のリソースに閉じず、他の国公私立大や国立研究開発法人と組んでミッションを果たす姿を求められる。事業規模の確保に向けて再編や統合、連携を選択肢に置き、2028年度に始まる第5期へ反映していく構えだ。
連携を前提にするという転換
基本方針は、各法人が自ら定めるミッションを起点に、単独の経営効率だけでなく、周囲の知と人材を束ねる動きを重視する。学部や研究科の枠を越え、国公私の大学や研究開発法人、自治体、産業界との結び付きを、継続的な体制として作り込むことが求められる。点の連携を線に、線を面にしていく組み立てだ。
事業規模を確保する手立てとしては、共同の教育研究や法人間連携に加え、状況に応じて再編や統合まで含むとした。地域で重複する機能の整理や、遠隔での共同運営など、形は一律ではない。実現の方法は各法人に委ねつつ、ミッションとの整合を軸に選択を促す構図である。躯体は変えずに中身を寄せるやり方も含め、幅を持たせている。
ミッションの設定と実装は大学の裁量にあるが、文部科学省は運営費交付金の配分や評価を通じて実行度を点検する。数値だけで競わせるのではなく、連携の質や成果の持続性を見通す観点を重ねる方針が示され、現場の意思決定に新しい軸が入ってくる。資金と評価の回路が、連携の深さと結び付けられることになる。
財務と人事を「見える化」で結び直す
方針は財務戦略の立て直しを要請し、法人全体の資金の出入りを一元的に把握する体制づくりを明記した。研究費、受託収入、寄附、附属病院など多様な資金源の流れを俯瞰し、学内配分の最適化を進める。停滞する領域の絞り込みと、伸びる領域への集中投資を同時に回す設計である。収益性と公共性の両輪を、可視化でつなぐ考え方だ。
人事では、卓越人材の獲得や任期・評価の運用を含む戦略の再設計を求め、理事会や学長補佐体制の権限と責任を明瞭にするよう促す。共同の教育研究を担う部署やクロスアポイントメントの拡充など、連携を支える仕組みをマネジメントの中核に据える発想がにじむ。研究科横断の配置や学外機関との往還を前提に、動ける人事を標準にしていく。
教育の価値付けとコスト負担では、プログラムや科目ごとのコストと便益を可視化し、学内外へ積極的に開示するよう求めた。学費の値上げを直截には掲げない一方で、説明責任の徹底によって合意形成を進める狙いがある。研究も同様に、共同研究などの便益を利害関係者に伝わる形で示すことを重視し、透明性で信頼を積み上げる方向だ。
次期サイクルに向けた実装と焦点
各法人は、次期サイクルの中期計画に今回の考え方を落とし込む。連携の枠組みを年度ごとの企画で終わらせず、資金配分や人員配置、知財の取り扱いまで整えることで、ミッションの達成経路を運営に接続することが鍵になる。学内の分配ルールと学外のパートナーシップを、ひとつの設計図に収める段取りが問われる。
運営費交付金の在り方を巡っては、有識者の会議体を設け、インセンティブ設計や改革促進策を検討するとしている。物価や賃金の変動下で基盤経費が目減りしがちな現状を踏まえ、配分ルールを分かりやすくし、連携や機能強化の取り組みを評価に結び付ける方向だ。財源の再設計は、現場の挑戦と直結する。
学内の打合せでは、学部長が研究科と病院の会計を合わせて議論する場面が増えたと聞く。足元の授業や研究を乱さずに線を束ねる作業は容易ではないが、少しずつ意思決定が一本にまとまっていく。制度の細部はこれから詰まるが、動き出した流れは静かにキャンパスの景色を変えつつある。
