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爆撃機のエンジン音がカリブ海上空に響いたのは、2025年11月20日のことだ。民間の飛行データを追っていた専門家は、その日だけで米軍機が少なくとも6機、ベネズエラ沖に現れたのを確認した。数日後には、マドゥロ政権の関係者を外国テロ組織に指定する期限が迫っている。軍事力と法律の圧力が、同じ海をはさんで同時に強まっている。
米軍機の示威と迫るテロ指定
20日の示威飛行には、空母ジェラルド・フォードから発進した戦闘機FA18Eに加え、長距離を飛べるB52爆撃機、信号情報の収集能力を持つRC135偵察機が投入された。米軍がベネズエラ周辺で軍事行動をちらつかせて以降、これほどの規模で多様な機種が一度に展開されたのは初めてで、カリブ海での存在感を誇示する狙いがにじむ。
その背後で進むのが、ベネズエラ政権側のネットワークとされる「カルテル・デ・ロス・ソレス」を外国テロ組織に指定する動きだ。米国務長官ルビオ氏は17日、この指定を24日に発効させると表明し、マドゥロ大統領らが軍や司法を薬物取引に利用していると非難した。一方でトランプ大統領は対話の可能性も口にしており、圧力と交渉のカードが同時に切られている。
圧力を受ける側も黙ってはいない。マドゥロ政権はここ2カ月ほど、防衛演習「インデペンデンシア200」を掲げて空軍や海軍、民兵組織を総動員し、上陸作戦への備えを強調してきた。周辺国では、米軍機とベネズエラ軍の動きが偶発的な衝突につながるのではないかという懸念の声が各地で上がるとの見方も出ている。不安は広がる。
「外国テロ組織」指定が意味するもの
外国テロ組織の指定は、米国がアルカイダなどに適用してきた制度で、対象への資金提供や訓練、装備の供与といった「物質的支援」を国内法で禁じる仕組みだ。カルテル・デ・ロス・ソレスはすでに7月、別枠の制裁リストに載せられ、国際金融システムへのアクセスを制限されている。今回の指定は、その一段階上の圧力として位置づけられる。
ただし、専門家はこの指定だけで大統領に新たな武力行使権限が与えられるわけではないと説明する。ホワイトハウスの法律意見も、いま認めているのは国際水域での船舶への空爆までで、ベネズエラ本土への攻撃は対象外とされる。それでも国防総省の幹部は「大統領に提示できる選択肢が増える」と語り、今回の大規模飛行を圧力の一部として位置づけている。
一方で、国連薬物犯罪事務所や米麻薬取締局の統計では、コカイン取引に占めるベネズエラの比重は小さく、同国は違法薬物栽培のない地域と分類されている。それでも麻薬撲滅の名目で行われた空爆では民間人の犠牲も出ており、今回の示威飛行が誰に向けられた圧力なのかを、カリブ海の静かな水面だけが黙って映しているようだ。
