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ダマスカスの軍用空港をめぐり、米側とシリア側の実務者が拠点設置の調整を進めていると、事情に詳しい複数の関係者が語った。兵站や監視、給油、人道支援の運用を想定し、イスラエルとシリアの非侵略合意を支える狙いだ。政府は確認を避け、国営通信は否定を伝えたが、秩序再編の足音は近い。
拠点構想の輪郭
関係者によれば、対象は首都近郊の空軍施設で、南部に想定される非武装地帯の玄関口に位置するという。拠点は戦闘任務ではなく、補給や監視の中継点として使う設計で、緊急時の給油や救難、医療搬送にも対応する構えだ。名称や正確な位置は公開されていない。
シリア軍関係者は、施設の主権はシリアが保持し、共同運用の範囲や権限は細部まで文書化する作業が続いていると説明する。米軍の規模は限定的で、段階的に展開する案が有力とされる。展開時期はまだ白紙で、周辺国の反応と治安情勢を見極める段取りだ。管制や保全の手順は当面、現地部隊の既存基準に合わせる見通しで、緊急時の連絡線も別系統で準備するという。
交錯する否定と沈黙
公式の発表はない。米政権高官は、対IS作戦の遂行に必要な態勢を常時評価していると述べる一方、部隊の活動地域や可能性のある地点への言及は避けている。作戦上の安全を理由に、基地名や座標の報道を控えるよう求める場面もあった。
一方、国営通信は外務省筋の話として、この種の報道を否定したと伝えた。関係当局は取材の照会に応じておらず、当事者の発言は限られている。現時点で確認されている範囲では、構想は調整段階にとどまり、現地での大規模な準備作業は目撃されていない。否定の背景には、外交交渉の繊細さと国内世論への配慮があるとの見方もある。
政変後の地図と往来
背景には、昨年の政変で旧政権が崩れ、暫定当局が首都を掌握したという変化がある。暫定大統領に就いたアフマド・シャラア氏は、治安と統治の立て直しを最優先に掲げ、対外接触を拡大してきた。年初以降、米側との連絡は複数回確認され、軍高官もダマスカスで接触している。非侵略合意をめぐる協議は、前線の静けさを保つための実務と重なり合う。
周辺では、防空や国境管理をめぐる新たな協力の模索も続く。越境攻撃の抑止や収容施設の管理など、課題は山積だ。米軍の駐留形態は見直しの議論が続き、後方支援の要を残す案が取り沙汰されている。実務の往来は増え、10日に米側要人との会談が取り沙汰されるなか、首都の検問や省庁の再編は移行期の輪郭を静かに映している。街の明かりはいつも通りで、地図の線だけが少しずつ引き直されている。
