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米国が北大西洋条約機構（NATO）の通常防衛の主役を、わずか2年あまりで欧州側に譲るよう求めている。国防総省の当局者が今週、ワシントンで欧州各国の外交官に対し、諜報やミサイル能力を含む防衛力の「大半」を2027年までに欧州側へ移すべきだと伝えたのだ。一方で、欧州側には期限は非現実的だとの声もある。急な負担移管は、前線の兵士や納税者、そしてNATOの結束に何をもたらすのか。
前線と納税者に迫る「2027年シフト」
要請が現実になれば、欧州の軍や市民は短期間で大きな負担増に直面する。米軍が担ってきた諜報、ミサイル防衛、指揮統制や兵站の一部を、英国を含む欧州諸国が自前で賄わねばならないからだ。ロイターの報道によれば、米側は期限までに移管が進まなければ、NATOの一部防衛調整の枠組みから手を引く可能性にも言及したとされ、現場には抑止力低下への不安も広がる。
欧州の防衛費はロシアのウクライナ侵攻後に増勢へ転じ、2025年のNATO首脳会議では2035年までに国内総生産（GDP）比5%への引き上げ目標も掲げられた。しかし装備の増産や人員確保には年月がかかる。複数の欧州当局者からは、2027年という米国のタイムラインは現場の準備状況を無視しているとの声が出ており、前線部隊と納税者にしわ寄せが集中することへの懸念がにじむ。
米国の思惑と、追いつけない欧州の時間
背景には、長年続く「負担の偏り」へのいらだちがある。国防総省の担当者は、2022年のロシアによる侵攻拡大以降も欧州の軍備増強がなお不十分だとの認識を示したという。今回の期限設定が、トランプ政権全体の正式方針なのか、それとも一部のペンタゴン幹部の構想なのかは定かでないが、米国内で「欧州はもっと自立すべきだ」との声が強まっていることは確かだ。
欧州側にとっては、急な米軍の存在感低下は対ロシア抑止の空白を生みかねない一方で、自らの防衛産業と部隊態勢を強化する好機とも映る。問題は、限られた時間でどこまで能力移管を現実の計画に落とし込めるかだ。2027年という年限は、NATOを弱体化させる「最後通告」にも、より自立的な欧州防衛への通過点にもなりうる。選択の重さは、いま静かに各国の首都にのしかかっている。
