xAIとサウジHUMAINが提携　500MW級AIデータセンター群を中東に建設へ

2025.11.20

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ワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ・センターのホールに拍手が広がる中、サウジのAI企業HUMAINのCEOタレク・アミン氏とxAIのイーロン・マスク氏が壇上で握手した。米サウジ投資フォーラムの場で、両社はサウジアラビアに出力500MW超の巨大データセンター群を共同開発し、NVIDIA製GPUを積んだ世界規模のAIインフラを整備する構想を明らかにした。xAIにとっては、アメリカ国外で初めてとなる本格的な計算拠点づくりが動き出したことになる。

xAIとHUMAIN、500MW超級AIファクトリーが担う役割

中核を担うのは、サウジ公的投資基金PIF傘下のHUMAINが建設する「AIファクトリー」だ。HUMAINは2025年5月、NVIDIAと戦略提携を結び、今後5年間で最大500MW規模のAIデータセンターを国内に整備する計画を発表していた。第1フェーズでは、最新のGB300 Grace Blackwellを搭載したAIスーパーコンピューター1万8000基を導入し、高密度なGPUクラスタを構成する。今回の合意で、このAIファクトリーがxAIのスーパークラスターを支える中核拠点として位置づけられた。

フォーラムで公表された新たな枠組みでは、HUMAINとNVIDIAが今後3年間でサウジと米国に最大60万基のGPUを展開する計画も示された。GPU（画像処理向けプロセッサだが、現在はAI計算の主力）が並ぶ500MW超の施設は、数十万世帯分の電力を消費する世界最大級のデータセンターとなる見込みだ。ここではxAIの大規模言語モデル「Grok」の次世代版の学習や推論が行われ、アメリカ外に分散した計算拠点として機能する。米政府はHUMAIN向けの先端AIチップ輸出を認めつつ、中国への迂回を防ぐ管理策も講じるとされ、中東がAIインフラの新たなハブとして組み込まれつつある。

サウジ発AIインフラ網に集結するAWS・AMD・Cisco

AWSや米スタートアップのGlobal AIも、この網の目に加わる。HUMAINはAWSと協力し、リヤドに最大15万基のNVIDIA GPUを備えた「AI Zone」を設け、AWSが運用を担う計画だ。一方でGlobal AIとは、米国内にGB300と高速ネットワークを備えた新キャンパスを開設し、学習と推論をまたぐ主力拠点に育てる構想を共有する。サウジと米国をまたぐこうした配置は、「ソブリンAIインフラ」、すなわち各国・各地域が自前で確保する計算資源の潮流を象徴している。

同じ会場では、NVIDIA陣営の外側からも巨大プロジェクトが相次いだ。AMDとCiscoはHUMAINと合弁会社を設立し、2030年までに最大1GWのAIインフラを展開する構想を発表した。第1段階として、2026年にサウジで100MW規模のセンターを稼働させ、AMD Instinct MI450 GPUとCiscoのネットワーク機器で構成する。さらに投資会社Blackstoneは、サウジでAIデータセンターを展開するためHUMAINと提携し、データ蓄積と解析の基盤づくりに乗り出す。複数の半導体・インフラ企業と金融資本が交差する構図は、サウジの成長戦略「ビジョン2030」がAIを中核産業に据えつつあることを物語る。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の訪米に合わせた今回のフォーラムでは、カショギ記者殺害事件への関与を否定する立場をトランプ前大統領が改めて示したとも報じられるが、その場で交わされた多くの握手の先に、砂漠の巨大データセンターが発する熱がこれからのAIの向かう先を静かに形づくっていきそうだ。