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「腹が立ちました」奈良地裁の法廷で、山上徹也被告は静かにそう語った。安倍晋三元首相銃撃事件の審理で明らかになったのは、旧統一教会の幹部を狙うために拳銃を求め、その過程でインターネット上の詐欺に遭い、支払いだけを失ったという経緯だ。匿名通報サイトに自ら詐欺情報を送ったという告白は、準備行為の一端と、歪んだ正義感の入り混じった心の動きを映している。
ネット詐欺と匿名通報が示す「ゆがんだ筋の通し方」
裁判で取り上げられたのは、山上被告が教団幹部襲撃のため、海外拠点を名乗る売人から拳銃と実弾を買おうとした経緯である。相手は「薬や武器を用意できる」と持ちかけ、被告は「小型で破壊力のある銃」を希望したとされる。代金として暗号資産ビットコイン約20万3000円分を送金したものの、現物は届かなかった。検察の説明では、取引の履歴が押収されたパソコンに残っていたという。
送り主からの返信は「お疲れさまでした」の一文だけだったと伝えられる。被告はこれを詐欺だと受け止め、損失額が大きいことに怒りを覚えたと法廷で述べた。その後、警視庁の匿名通報窓口に、この売人の情報を送ったとも証言している。違法な銃を買おうとした当事者が、自ら相手を警察に知らせたこの行動は、犯罪計画の中で「金だけは泣き寝入りしたくない」という、独特の筋の通し方を示しているようにも見える。
家庭崩壊から自作銃へ、長く続いた準備の時間
山上被告の計画は、突然始まったものではない。母親が世界平和統一家庭連合に多額の献金を続け、家計が行き詰まったことへの恨みが出発点とされる。教団に強く反発していた兄の自殺を経て、被告は最高幹部への襲撃を考え始めた。2019年には韓鶴子総裁の来日に合わせて火炎瓶を持ち出したが、現場で踏みとどまり、計画は未遂に終わったとされる。標的だけを狙い、周囲の被害を抑えたいという思いから、より確実に殺傷できる手段として銃に傾いていった。
検察の冒頭陳述などによれば、ネット購入に失敗した後、被告は銃と火薬を自作する方向に踏み出したとされる。ホームセンターや通販で約847点、総額およそ60万円分の材料を集め、動画投稿サイトの解説や米国製ゲームに登場する銃の形状をまねて試作品を作った。奈良市内のアパートで組み立てと改良を重ね、山中で試射を繰り返すうちに、致命的な威力を持つ装置が形になっていった。身近な店と画面の向こうの情報だけで、現実の凶器が静かに組み上がっていった過程を、裁判は少しずつ浮かび上がらせている。
