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山あいの集落に、重い破裂音が響いた。福岡県八女市星野村の山中で、男性3人が乗ったとみられる軽飛行機が墜落し、機体は大きく壊れた。救助された3人はいずれも心肺停止で、林の斜面には黒い焦げ跡が残る。佐賀から大阪へ向かったはずの小さな旅は、出発からわずか数十分で途切れた。
山中に墜ちた小型機、通報から救助まで
事故が起きたのは2025年11月18日午前10時半ごろとされる。星野村の山道近くを通りかかった男性が「小型機のようなものが落ちて黒い煙が見える」と119番通報し、消防や警察が出動した。現場周辺では林野火災も発生し、消火と救助の部隊が山肌を分け入っていったという。
午後に入り、斜面の中腹で大破した機体と男性3人が見つかった。八女消防本部によると、3人はいずれも搭乗者とみられ、午後1時30分ごろまでに全員の心肺停止が確認された。現場は福岡と大分の県境に近い急峻な地形で、周囲には折れた木や焦げた草が広がり、上空には消火活動を続けるヘリが旋回していたとされる。
佐賀から八尾へ、途切れた予定飛行
軽飛行機は同日午前10時10分ごろ、佐賀空港を離陸した。佐賀空港事務所が把握していた飛行計画では、大分県や愛媛県の上空を経由し、大阪府の八尾空港に向かうルートが記されていたという。離陸からほどなくして機体から遭難信号が発信されたことが確認され、管制側はレーダーの軌跡が途切れた地点を手掛かりに、山中の捜索を急いだ。
県の説明などによると、機内には50代から70代とみられる男性3人が乗っていた。うち2人は京都市在住、もう1人は神戸市在住とみられ、前日17日に京都から佐賀に入っていたとの情報もある。家族や関係者への連絡が進む一方で、身元や詳しい搭乗経緯の最終的な確認作業が続いている。
小型機の遭難信号は、機体が強い衝撃を受けた際などに自動で電波を出す装置で、今回はその発信がおおよその位置をつかむ手掛かりになったとみられる。今年3月には、同じ佐賀空港を拠点とする小型機が長崎県新上五島町の山林に墜落し、乗っていた4人全員が歩いて避難して無事救助された例もあった。今回の事故との違いを含め、運輸安全委員会などが原因究明にあたることになる。
山に残された焼け跡とねじれた機体は、出発前には当たり前だった日常が一瞬で失われたことを、静かに語りかけているように見える。
