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ゆうちょ銀行は、ATMを使った特殊詐欺の被害を減らすため、AI(人工知能)による画像分析を使った対策を一段と踏み込んだ内容に切り替える。SocioFuture株式会社や日本ATMビジネスサービス株式会社と連携し、既に全国のATMで防犯カメラの映像をAIが解析しているが、2026年1月以降は、通話しながら操作していると判断された場合に、取引そのものを中断するケースも想定する。便利なATMをどこまで「見守りの目」で覆うのか、生活者側の行動変化も問われる局面だ。
ATM前での「ながら通話」に強いブレーキ
今回の強化で、ATM利用者が最も変化を実感しそうなのは、画面と周囲からの「声」だ。ゆうちょ銀行は、これまでATMコーナーの防犯カメラ映像をAIが読み取り、機械の前で携帯電話を耳に当てているような動きを捉えた際、上部のデジタルサイネージに警告画面を映し、警告音を流して注意喚起してきた。今後はこの警告表示を、サイネージだけでなく送金取引中のATM画面にも組み込み、利用者の目の前で「その電話、大丈夫か」を改めて問いかける構えだ。
ゆうちょ銀行の発表によれば、2026年1月以降は、こうした画像情報を踏まえて取引を途中で止める判断も行う可能性があるという。どのような条件で中止に踏み切るかの詳細は示されていないが、「通話しながらATMを操作している」という状況自体を、還付金詐欺などの典型的パターンと重ねて見る発想だ。利用者からすれば、急ぎの振り込み中に正当な用件で電話をしていても、システムが誤って危険と判定するリスクはゼロではない。画面に警告が出た場合に、窓口で事情を説明して手続きをやり直すなど、これまでとは異なる一手間が生じる可能性もある。
背景には、犯罪側が電話で細かく指示を出しながらATMへ誘導する手口の広がりがある。警察庁は「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を通じて、そもそもATMコーナーで通話しないことを社会のルールとして根付かせようとしてきたが、それでも高齢者を中心に被害は後を絶たない。長野県JAバンクが一部の高齢者口座でATM出金を制限するなど、他の金融機関でもATM取引をあえて絞り込む動きが出ており、「簡単に使えるATM」を前提にしたこれまでの常識は、少しずつ見直しを迫られている。
AIと警察の連携で広がる「見守り網」、残る課題
ゆうちょ銀行のAI活用は、いきなり全国で始まったわけではない。2023年から関東圏のATMで実証実験を重ね、携帯電話で話すしぐさをどこまで正確に見分けられるか検証してきた。その結果、通話動作の検知精度はおおむね高められたとしつつも、警告画面に利用者が気づかないケースが課題として残った。この反省から、警告を映す場所を増やし、警告音も警察庁の特殊詐欺対策プロジェクト「SOS47」に参加する著名人の声に切り替えるなど、「気づいてもらう工夫」を重ねてきた経緯がある。
今回の強化策では、警察庁と連携した啓発コンテンツを、全国のゆうちょ銀行ATMコーナーに設置されたサイネージで毎日2回放映する。直営店や店舗外、郵便局に設置された数千台規模の画面が一斉に「ATMで電話をしないで」と呼びかけることで、詐欺グループにとっての「標的の見つけやすさ」を下げる狙いもある。金融庁も別途、預貯金口座の不正利用防止を金融機関に要請しており、店舗の縮小やキャッシュレス化と並行して、ATM空間そのものをリスクの低い場に作り替えようとする動きが強まっている。
一方で、AIが読み取るのは、あくまでカメラに映る身体の動きだ。腕の位置や顔の向きだけでは、家族との連絡や介護の相談など、利用者にとって本当に必要な通話と詐欺の指示とを完全に見分けることはできない。防犯カメラ映像をAIが常時分析することへの違和感や、誤検知で取引が止められたときの不便さをどう受け止めるかは、人によって評価が分かれそうだ。強まる監視と安心のバランスをどこに置くのか——AIと警察を組み合わせた新たな見守り網は、特殊詐欺を抑え込めるかどうかだけでなく、私たちがATMとどう付き合うのかという問いも投げかけている。
