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モニターの小さな枠に、マンションの入口や牛舎の通路が次々と映し出される。画面の向こうにいる人たちは、いま自分たちの様子が外からのぞかれているとは気づいていない。読売新聞と情報セキュリティー会社トレンドマイクロの分析で、日本国内のネットワークカメラの映像が海外サイトを経由せず、外部から直接見えてしまう例が少なくとも約3000件に上ることがわかった。
玄関ホールから牛舎まで、想定外の「公開空間」
調査では、世界中のIoT機器を自動的に集める海外の検索サービスを使い、2025年11月中旬時点で日本のカメラを洗い出した。その結果、約4100件が検出され、このうち屋内と判断された映像が約750件、駐車場など建物の外側を捉えた敷地内映像がおよそ2200件あった。いずれもブラウザから直接アクセスできる状態で、中には海外の公開サイトにまだ収集されていないカメラも多く含まれていた。
画面に映る場所は多様だ。屋内ではマンションのエントランスが最も多く、子ども関連施設や高齢者施設、医療機関、住宅、オフィス、大型商業施設、食品工場など、人の出入りが絶えない空間が目立つ。屋外の敷地内では、駐車場や駅のホーム、港湾施設、牛舎などが確認された。もともと見守りや防犯のために設置されたはずのカメラが、意図しない「公開窓」となっている構図が浮かぶ。
数字が示す偏りと、見落とされた設定
カメラの設置地域はIPアドレスから推定され、屋内と敷地内を合わせると東京都が約700件と最も多く、福岡県約290件、大阪府約220件、北海道約210件と続く。人口や施設が集中する地域ほどネットワークカメラの利用も広がり、そのぶん無防備なままの台数も増えているとみられる。過去に海外の7サイトで確認された日本の映像は約500件にとどまっており、今回の「直接閲覧」件数はその6倍に達する。
背景には、初期設定のまま使われている機器の多さがある。多くのカメラはパスワード入力などの認証が無効の状態で接続されており、検索サービスで見つけた第三者がアクセスすると、ログイン画面なしで映像が表示されてしまう。以前、海外サイトに掲載されていた約500件の日本の映像でも、こうした設定不備が原因と分析されており、便利さを優先して細かな設定を後回しにしてきた積み重ねが、現在の規模を生んだとも言える。
検索技術が広げるリスクと、利用者にできること
今回の調査に協力した森井昌克・神戸大名誉教授は、検索サービスに載っていないカメラも相当数あると見て「氷山の一角」と話す。IPアドレスや地図サービスと組み合わせれば、建物の位置や出入口の構造、生活パターンを推測することも難しくない。防犯カメラの映像は、侵入経路の下見やストーキングなど、犯罪の準備に転用されるおそれがあると専門家は警鐘を鳴らす。
一方で、調査そのものが法令に触れないよう、読売新聞は事前に弁護士に相談し、不正アクセス禁止法などに違反しないことを確認したうえで検索サービスを利用している。一般の利用者が他人のカメラを探し回る必要はないが、自宅や職場の機器については、初期パスワードを必ず変更し、不要な外部アクセスを無効にし、ファームウェアを更新することが求められる。公的機関や政府もIoT機器の安全基準見直しを進めており、教育や医療の現場では暗号化やアクセス制限の強化を求める議論が始まっている。
静かに点灯を続けるレンズの先で、日常の風景は今日も記録されている。その映像を誰にまで届けるのかという問いは、機器の設定画面の奥にひっそりと潜んだままだ。
