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採決のベルが鳴るたびに、議場の視線が掲示板へ集まった。米下院は2025年11月13日 09:00ごろ、政府の一部閉鎖を終わらせるつなぎ予算（CR、暫定的に政府を動かす予算）を採決し、同日中の可決で終結が現実味を帯びた。法案はすでに上院を通過し、ホワイトハウスは成立次第の署名を明言している。43日目に入った最長の閉鎖に、出口の灯がともる。
最長の43日を経て、終わりが見える
閉鎖は2025年10月1日に始まり、航空や食料支援、国立公園など幅広い現場を揺さぶってきた。上院は2025年11月11日に賛成60、反対40で合意法案を可決。下院は同13日に採決に踏み切り、222対209で可決した。大統領が署名すれば、停止していた連邦機関の業務は段階的に再開される。
下院は与党の小差多数のもとで審議がもつれたが、最終局面では反対してきた一部の民主党議員も賛成に回った。採決を前にジョンソン下院議長は超党派の協力を呼びかけ、ホワイトハウスも成立次第の署名を示した。政治的な綱引きが、現場の疲弊にようやく追いついた形だ。
今回の閉鎖は、2018〜2019年の記録を上回る最長となった。期間の長さは、政争の性質が短期の駆け引きから制度の根幹を巡る衝突へ変質していることを映す。合意に至った今も、原点の対立は解けていない。終わりに近づく動きと、続いていく論点が同じ盤面に並んでいる。
法案の中身と残された火種
法案の柱は、つなぎ予算で政府を2026年1月30日まで動かすことだ。あわせて農務・退役軍人・議会など3本の通年歳出を束ね、賃金の遡及支払いとレイオフの取り消しを明記した。つなぎ予算（CR）は本予算が成立するまで行政を止めないための暫定措置で、今回は人員削減の凍結も含む。
一方で、医療保険料の負担を抑える仕組みの一部であるACA補助（医療保険の税額控除）の延長は見送られた。民主党が求めてきた論点で、上院側は12月中旬までの採決を約束するにとどめた。再開のために先送りした火種が、年末に再燃する可能性は残る。
ホワイトハウスは、今回の合意を「余計な条件を付さない整理」と位置づけ、成立次第の署名で迅速な再開を図る方針だ。予算が流れ始めれば、滞っていた連邦職員の給与や調達、退役軍人医療や食料支援などの執行が戻る。再稼働の速度は省庁ごとに差が出る見込みだ。
現場の影響とこれから
長期化の影響は広範だった。空港の保安検査や管制の負担が増し、国立公園の閉鎖や清掃滞りが目立った。食料支援や女性・乳幼児向け給付の枠組みは急場をしのいだが、現場には遅延と不安が残った。再開後は未処理案件の山をどう崩すかが、各機関に共通の課題になる。
合意はあくまで一時停戦である。延長後の期限はすぐに来るため、歳出法案の詰めと医療保険の扱いが再び焦点になる。仮に調整が遅れれば、同じ局面が戻る恐れがある。与野党の駆け引きの余白は小さく、次の数週間が年度予算の行方を左右するとみられる。
掲示板の数字が固まり、静かな拍手が広がった。止まっていた歯車が音を立てて動き出す。だが回転の滑らかさは、これからの対話に左右される。
