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デリーの一室で向かい合うレンズと記者の目。アフガニスタンの外相が訪印中の会見で、女性記者が招かれなかったという事実が波紋を広げた。10日の出来事は、国境をまたぐ外交の場で何が許されるのかという根源の問いを投げかける。女性の権利をめぐる国際的な懸念が高まるなか、現場の一枚が語る重みは小さくないと映る。
デリーの会見で何が起きたのか
2025年10月10日、ニューデリーのアフガニスタン大使館でアミール・カーン・ムッタキ外相の記者会見が開かれた。現地報道によれば、この場に女性記者は招かれず、会場に入れなかったという。大使館側からの明確な説明は示されず、インド政府もコメントを控えたと伝えられている。外交の場での選別が公然と起きたという現実が立ち上がる。
会見はタリバン政権の要人が首都デリーで見解を示す貴重な機会と位置づけられていた。にもかかわらず、最前線で取材を担う女性の排除が報じられたことで、出来事の焦点は政策の説明からアクセスの不平等へと移った。報道の現場では「誰が問いを立てられるのか」がニュースの核になると改めて突きつけられた格好だ。
11日にかけて、問題は政治とメディア双方に広がった。インド国内の記者団体や野党政治家は「性別によるアクセス制限」は容認できないと批判を強め、会見開催国であるインドの責任範囲についても議論が起きた。外交施設の権限と開催地の社会的規範が交錯し、法と倫理の境界線があらわになったといえる。
写真が映したもの、社会に広がる問い
会見をめぐる騒動ののち、現地紙やSNSには女性記者が最前列に並ぶ様子をとらえた写真が相次いで共有され、象徴的な構図が議論を加速させたとみられる。報道の現場に女性が「いる」という当たり前の光景が、権利と尊厳の可視化として受け止められた。目に見える席順は、社会の優先順位を映す鏡のようでもある。
インドの編集者団体や女性記者ネットワークは、外交の自由や施設の権能があっても、開催地の社会で認められない差別は正当化できないとする趣旨の声明を相次いで発した。現時点で確認されている範囲では、政府の関与の有無を巡る見解は割れており、開催主体と開催地の責任分担が改めて問われている構図だ。
同時に、報道関係者の内部にも自省の声が生まれた。選別が行われた場で、同僚の入場拒否に対しどうふるまうべきか。沈黙は構造的な不平等の常態化に加担しうるという指摘が広がり、メディア側の行動規範も試されている。写真は一枚だが、そこに映るのは記者と権力、そして社会の関係性そのものだといえる。
国際社会の視線――「ジェンダーのアパルトヘイト」という言葉
アフガニスタンでは、女性や少女の教育・就労・移動に対する厳格な制限が続くとされ、国連の場では「ジェンダーのアパルトヘイト」という強い表現が用いられてきた。女性が中等教育や大学から締め出され、公園やジムなど公共空間の利用も禁じられる状況は、権利剥奪の体系として国際的な懸念を呼んでいる。
国連安保理の会合でも、タリバン側が国際的義務を選択的に扱っているとの報告が相次ぎ、女性の権利は「交渉の余地のないもの」だと各国が訴える場面が続いた。政治的な関与が成果を上げていないという苛立ちも示され、関係構築の前提に人権尊重を据えるべきだとの主張が強まっていると映る。
今回のインドでの出来事は、こうした国際的な視線の延長線上に置かれる。会見という可視の舞台で女性を排除するか、同等の主体として迎えるか。その選択は単なるプロトコルの問題ではない。外交の作法と人権の基準をどこで結び直すのかを示すテストであり、地域の安定や信頼にも波及する重みを持つ。
