本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
県庁の担当者が回答書を手渡したのは2025年11月11日。愛知県は、三河港(豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市)を自衛隊や海上保安庁が平時から使える「特定利用港湾」に指定する国の提案に同意した。指定は2026年3月ごろの見込み。民生利用を主とする原則を確認しつつ、災害対応力と港の機能を高める一歩になると県は判断した。
三河港に広がる新しい役割
国からの受け入れ依頼は10月下旬に届いた。県は同意にあたり、民生利用が主である趣旨の順守、県と関係自治体への丁寧な説明、民生と災害対応に資するインフラ整備、安全確保と事故時の速やかな情報提供―の4点を条件として示した。回答書を送付したうえで、同意の方針を公表している。
「特定利用空港・港湾」は、民間の運用を基本に保ちながら、平時から自衛隊や海保の航空機・船舶が円滑に利用できるようにする枠組みだ。滑走路延長や岸壁強化などの整備を計画的に進め、年数回程度の訓練を想定する。船舶による住民避難の訓練など、災害時の運用を念頭に置いたメニューも含まれる。
大村秀章知事は11日の定例会見で、優先利用や有事の枠組みではないことを国と確認したうえで同意したと述べた。災害対応力の向上につながるとの見立ても示している。港の現場にとっては、日常運用を保ちながら緊急時の導線を確保する設計が問われる段階に入ったと言える。
制度の狙いと広がり
今回の動きは、2022年に策定された国家安全保障戦略(中長期の安全保障方針)に基づく。国はこの方針のもと、特定利用空港・港湾を順次指定してきた。2025年8月時点で全国では14空港と26港湾が指定されており、愛知県内では初のケースとなる。平時からの利用手順や通信・電源の確保など、現場の標準化を進める意図がある。
制度の骨格は、日常の物流や人流を阻害しないことに重心を置く点にある。港や空港の混雑時間帯を避けた訓練設定、既存バースの強化と共用ルールの整備、非常時の連絡系統の明確化など、運用の細部に「民生優先」を埋め込む設計が前提となる。指定は、こうした調整を進めるための“共通言語”でもある。
災害の多い日本では、防災・減災の観点が制度を支える。想定される訓練は、港湾における負傷者搬送や物資受け入れの手順確認など、地域の総合防災訓練と重ね合わせやすい。平時の訓練頻度は年数回程度にとどめつつ、関係機関の連携を磨くことが主眼であり、地域社会との合意形成の丁寧さが実行力を左右する。
地域にとっての意味を見つめる
三河港は生活と産業を支える公共インフラであり、制度の導入はその日常性と非常時の即応性を両立させる試みだ。県が条件に掲げた「丁寧な説明」は、港湾利用者や沿岸住民の不安を小さくする鍵になる。訓練の実施時間や区域、騒音・交通への配慮、万が一の事故時の情報提供の流れまで、事前に示すことが信頼につながる。
指定までの準備段階では、岸壁やバックヤードの強化、非常用電源や通信の冗長化、避難導線の可視化などが検討対象になるだろう。港は多様なプレーヤーが交差する場であり、港湾管理者、自治体、事業者、関係機関が同じ地図を共有できるかが成否を分ける。県が示した4点は、そのための最低限の合意事項と言える。
指定はゴールではなく、運用を重ねて磨くほど実効性が増す。災害対応の改善点を訓練で洗い出し、通常の港湾運営にも還元する循環ができれば、制度の存在感は静かに定着していく。地域に過度な負担を強いず、必要な備えを積み上げる。その針路が、今回の同意で描き出された。