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米半導体大手Advanced Micro Devices（AMD）のリサ・スーCEOが4日（現地時間）、対中輸出が制限されているAI半導体「MI308」の一部について、米政府から輸出ライセンスを既に受け取ったと明らかにした。中国向けに実際に出荷する場合、売上の15％を米政府に納める条件も受け入れる考えだという。厳しい輸出規制の下でも中国市場を手放さない姿勢は、AI半導体ビジネスの新たなコスト構造を象徴している。
15％の追加負担をのんででも、中国市場を守る理由
スー氏は米サンフランシスコで開かれた技術イベントで、制限付きながらも中国への供給を再開したいと語ったとロイターは報じている。AMDは今年4月、MI308に課された新たなライセンス要件により、在庫や調達契約の評価見直しで最大8億ドルの損失が出る可能性を、証券当局向けの報告書で示していた。今回のライセンス取得と15％負担の受け入れは、そうした埋没コストを少しでも回収しつつ、中国での足場を維持するための現実的な選択といえる。
もっとも、15％という追加コストは利益率を直接圧迫する。AMDがどこまで自社で吸収し、どこから価格に転嫁するのかは、中国のクラウド大手やAIスタートアップとの交渉力に左右されそうだ。NVIDIAやIntelも同様に中国向け専用チップとライセンス要件に縛られており、調達先を分散したい中国企業の思惑と、米側の規制強化という綱引きが続く中で、1社ごとの条件設定が今後のシェア争いを左右する局面に入っている。
揺れる輸出ルールの下で、誰がコストを負うのか
今回の15％負担は、トランプ政権が8月にAMDやNVIDIAと結んだ合意の一部とされ、全面禁輸を避けながら対中輸出に「通行料」を課す仕組みだ。ロイターや米CNBCの報道によると、一部の米国の法学者は、輸出品に実質的な課税を行うことは憲法が禁じる輸出税に抵触する恐れがあると警戒している。AIの軍事転用を警戒する安全保障の論理と、企業活動への過度な負担を避けたい通商・憲法の論理が、同じ枠組みの中でせめぎ合っている格好だ。
一方で、先端AIチップの対中輸出を原則30カ月凍結しようとする法案が米上院に提出されるなど、規制緩和そのものを縛ろうとする動きもあるとロイターは伝える。15％を支払えば安定して売れるのか、それとも再び全面禁止に振り戻されるのかという不透明さは、AMDやNVIDIAといったメーカーにとどまらず、彼らのチップに依存する世界中のAI関連企業の投資判断も難しくしている。誰がどの程度のリスクとコストを負担するのかという問いは、今後の政策議論と企業戦略の中で、重さを増していきそうだ。
