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通販大手アスクルが2025年10月19日、ランサムウエア感染によるシステム障害を公表し、法人向け「アスクル」と個人向け「LOHACO」の受注・出荷を停止した。無印良品を展開する良品計画も、物流障害の影響で19日夜からネットストアを止め、20日に明らかにした。復旧時期は示されておらず、影響の連鎖が広がっている。
止まった受注、連鎖する影響
週明けのオンラインストアに「物流障害の影響により、現在サイトを停止している」との告知が静かに掲げられた。カートは閉じ、再開は未定という文言が残る。2025年10月19日夜、無印良品のネットストアを訪れた利用者は、買い物の導線が唐突に途切れる感覚を共有したとみられる。日常の小さな便利さが、ふと断ち切られた光景が浮かぶ。
同日、アスクルは自社システムがコンピューターウイルス「ランサムウエア」に感染したことを確認し、受注と出荷を全面的に止めたと説明している。停止の対象は法人向けの「アスクル」と個人向けの「LOHACO」だ。一部報道によれば、既に受け付けた注文もキャンセル扱いになるという。ネットでの購入体験は、平時には見えにくい基盤の健全さの上に乗っていると映る。
感染の検知は2025年10月19日午前とされ、現時点で復旧の見通しは立っていない。業務継続のために最も優先されるのは被害範囲の切り分けと封じ込めだが、その過程で業務停止が長引くリスクもある。サプライヤーや外部委託先を含めた連絡網の整備と情報の透明化が、利用者の不安を抑える唯一の手がかりとなる。
物流の結び目がほどけるとき
良品計画は2025年10月20日、ネットストア停止の理由として「物流障害の影響」を挙げた。配送の一部をアスクルの子会社に委託しており、その障害が波及したとみられる。店舗での販売は続く一方、オンラインの集客や在庫運用は急ブレーキを余儀なくされ、利便性を支えてきた分だけ、落差の大きさが際立つ。サプライチェーンの結び目が一つ解けるだけで、全体の張力が失われる構図である。
オンライン依存度が高い中小ブランドや委託事業者にも、波及が及ぶ可能性がある。倉庫・WMS・配送のどこで止まっても、注文受付から出荷までの時間軸は簡単に崩れる。ポイント付与やクーポンの有効期限、予約販売や定期購入といった付帯機能も、停止の長期化に応じて調整が必要になる。小さな遅延や仕様変更が、顧客の行動を静かに変えていく。
現時点で確認されている範囲では、企業側は段階的な復旧と安全確認を優先する構えだ。支払いの取り消しや返金、受け取り希望日の再調整など、フロントの案内だけでは解けない課題も積み上がる。障害の原因と再発防止策がどこまで共有されるかに、信頼回復の速度が左右される。沈黙は短期的な炎上を避けても、長期的な離反を招きかねない。
復旧への道筋と、いまできる備え
ランサムウエア被害からの復旧は、感染端末の隔離、ログの精査、バックアップからの復元、段階的な再開という順路が定石である。認証情報の無効化や再発防止のパッチ適用も欠かせない。現場では「急いで動かす」ほど再汚染の芽を残しやすい。復旧の時期を示しにくいのは、その慎重な工程を優先した結果だと読むべきだろう。
同種の連鎖を防ぐには、委託先を含めたネットワーク分離、多要素認証、端末監視、そしてオフサイトのバックアップと復元訓練が要る。BCPの棚卸しを怠らず、権限や鍵管理を最小化しておくことが、障害時の停止範囲を狭める近道になる。インシデント対応の連絡窓口と体制を、平時から外部向けにも明示しておきたいところだ。
利用者にできるのは、注文履歴と決済状況の確認、フィッシングに対する注意、再開後の配送メールの差出人やリンク先の検証である。キャンセルや返金が発生するケースでは、通知の文面やタイムスタンプを保存しておくと後の問い合わせが滑らかになる。混乱の最中でも、記録という小さな備えが自分を守る盾になると映る。
