オランダ報道「中国軍関連企業がASML製装置を購入」　同社は適法取引を強調

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2025.12.10

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オランダの公共放送の時事番組Nieuwsuurは12月9日、半導体製造装置大手ASMLの顧客の中に、中国軍と関係する企業が少なくとも1社含まれていると報じた。中国の輸出入データなどを基に、軍需電子機器を担う国有企業グループの子会社がASML製装置や部品を購入していたと指摘されている。ASMLは個別の顧客には言及せず、報道内容は確認できないとしつつ、全ての取引は輸出管理法に従い、必要な輸出許可を得ているか、規制対象外の製品に限られると説明している。

軍事転用リスクと、企業がどこまで顧客を把握できるか

NieuwsuurとReutersによると、問題の企業は中国軍向けレーダーや通信機器を供給するChina Electronics Technology Groupの子会社とされる。また、ASMLの装置は深圳の研究機関や中国の中堅半導体メーカーなど複数の先端プロジェクトにも納入されているという。ASMLの機器は世界中の半導体工場で使われており、中国最大手のSMICも利用しているが、同社は通常、顧客名を公表していない。

ASML側は、自社がオランダやEU、米国の輸出規制に従っていることを繰り返し強調してきた。政府が定めるリストに基づき、先端の露光装置には輸出許可が必要であり、当局が判断した範囲でしか出荷していないという立場だ。それでも、輸出が合法であっても、最終的な利用者が軍需関連であると示された場合、企業イメージや投資家の評価に影響しうるとの見方も専門家から出ている。

今回の報道が突きつけるのは、企業がどこまで顧客や再販先の実態を把握し、軍事転用リスクを管理できるのかという問いである。サプライチェーンが複雑化するなかで、一次の販売先が合法でも、その先で軍事関連プロジェクトに流れ込む可能性は否定できない。ASMLに限らず、先端技術を扱う企業は、法令順守に加え、どこまで自主的なリスク評価を積み増すべきかが改めて問われている。

輸出管理強化が進むオランダと、中国市場への依存

オランダ政府は2018年以降、ASMLが製造する最先端のEUV露光装置について中国向け輸出を事実上止め、その後も米国や日本と足並みをそろえて管理対象を広げてきた。2023年には、先端の液浸DUV装置の輸出に新たな許可制を導入すると発表し、ASMLも「対象機種についてオランダ政府への申請が必須になる」と公式声明で認めている。さらに2024年には、より旧型の装置にもライセンス義務を拡大する措置が取られ、安全保障を理由に中国への流出を細かく制御する枠組みが整えられつつある。

一方で、ASMLにとって中国は最大市場の1つだ。Reutersが紹介した同社の年次報告によれば、2024年には売上の3割超を中国向けが占めたとされる。輸出規制の強化や各国の「技術主権」志向を背景に、中国企業の投資は抑制傾向にあり、ASML自身も今後は中国比率が下がるとの見通しを示している。成長市場へのアクセスと安全保障上の懸念との板挟みは、同社だけでなく欧州の半導体関連企業全体が抱える構造的な課題だ。

オランダ国内では、政府がどこまで厳しい輸出管理を続けるべきか、中国との関係悪化や報復措置のリスクも踏まえた議論が続いている。外交筋の発言として、オランダは国家安全保障を最優先しつつも、貿易は可能な限り開かれた状態を維持したいとの姿勢が各メディアで伝えられている。ASMLの中国軍関連顧客をめぐる今回の報道は、この微妙なバランスが今なお揺れ動いていることを象徴しており、輸出管理の線引きと企業の責任範囲をどう再定義するのかが今後の焦点となりそうだ。

軍事転用リスクと、企業がどこまで顧客を把握できるか

輸出管理強化が進むオランダと、中国市場への依存

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