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川崎重工業とかんでんエンジニアリング、エアロトヨタの3社が、送電鉄塔向けの物資輸送を想定した無人ヘリの飛行試験を行った。舞台は滋賀県甲賀市にある関西電力送配電の甲賀訓練場で、機体「K-RACER」が荷揚げから鉄塔近くの荷降ろしまでを自動でこなした。山の斜面を重い資材を背負って登る作業を、どこまで機械に置き換えられるのかを探る一歩だ。
山の鉄塔に“人が登らない”物資輸送を
国内の送電鉄塔は約24万基あり、その多くが山あいの急斜面や谷をまたぐ場所に建つ。建て替えや保守の度に、鉄材やがいしなどの資材を運び上げる作業員には、大きな身体負担と転落の危険が伴ってきた。有人ヘリやモノレールを使う場合でも、天候や騒音、操縦要員の確保といった制約があり、現場は常に綱渡りの計画を強いられている。
今回の実証では、3社が活用を進める無人ヘリ「K-RACER」が、地上で積み込んだ物資を自動飛行で吊り下げ、送電線などの障害物があるエリアを避けながら鉄塔近くまで運んだ。一斗缶や懸垂がいし、工事用はしごといった実際の現場で使う資材を想定し、荷揚げから荷降ろしまでを連続した一つの作業としてこなせるかを確認した。人は離れた場所から監視するだけで、機体のそばに付き添う必要はなかった。
「K-RACER」は直径7mのローターを持ち、1回に最大約200kgの荷物を運べる設計だ。100kmを超える航続距離が見込まれ、資材置き場から山頂の鉄塔までを往復する使い方も視野に入る。有人ヘリより小回りが利き、人力運搬よりも一度に運べる量が多いことで、現場の安全と作業時間の両方を削減できる可能性がある。
協業で探るビジネス化と災害利用の行方
川崎重工と2社は2025年3月、「送電鉄塔向け物資輸送における協業検討に関する合意書」を結び、今回の試験もその延長線上にある。送電鉄塔向けだけでも数十機、関連分野まで含めれば数百機規模の需要が見込めるとし、機体の製造だけでなく運航サービスとして事業化する構想だ。送電会社や工事会社が必要な時だけ無人ヘリを呼び出せる仕組みを描き、費用負担を抑えつつ導入しやすくする狙いがある。
背景には、少子高齢化で山仕事の担い手が減るなかでも、老朽化した送電設備の更新を進めなければならないという矛盾がある。これまで人の体力と経験に頼ってきた運搬作業を機械に移すことで、熟練作業員には監督や判断といった役割へシフトしてもらう構図だ。人を危険な場所に近づけないことが、インフラ維持を続ける前提条件になりつつある。
「K-RACER」は南海トラフ地震を想定した自衛隊の訓練でも、孤立地域への支援物資を無人で届ける実証を行っている。平時の送電工事と、大災害時の緊急輸送の両方で使える手段になれば、インフラと防災のすき間を埋める存在になり得る。ただ、山間での自動飛行を常態化するには、飛行ルールや安全基準、運用コストといった課題も多い。現場の負担をどこまで軽くし、リスクを増やさずに済むのか、その見極めがこれから問われる。
