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静かなミンスクの空気の下、年末の配備計画が動き出している。ベラルーシはロシアの新型極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を12月に配備する方針だ。2025年10月28日、ルカシェンコ大統領の報道官が準備は「ほぼ完了」と述べた。欧州の抑止環境に新たな圧力がかかる局面である。
12月配備へ――静まらない緊張とベラルーシの算段
2025年10月28日、ロシア国営通信の報を引く形で、ベラルーシ大統領報道官が「オレシニク」を12月に配備すると明言した。配備準備は「ほぼ完了」とされ、足取りは早い。ルカシェンコ大統領は先行して「西側諸国のエスカレーション」への対抗を示し、抑止の枠組みを強める狙いをにじませていた。発表のタイミングからも、周辺国の視線を意識した動きと映る。
「オレシニク」はロシアが開発した極超音速の中距離弾道ミサイルと位置づけられる。射程や諸元の全容は公表されていないが、ロシア側は迎撃困難性を繰り返し強調してきた経緯がある。大量使用時の破壊力を誇示する発言も重なり、真偽の検証を要しつつも近隣社会に不安をもたらしているのは事実だ。現時点で確認されている範囲では、配備自体が周辺の警戒感を高める要因となっている。
配備先の選定を巡っては、過去にベラルーシ国内の複数地点が候補として挙がってきた。旧戦略兵器関連の施設を着想源に、距離とカバー範囲を天秤にかける発言もあった。国境線までの距離や周辺インフラの再整備を考慮すれば、運用の立ち上がりには段階的な手順が必要とみられる。とはいえ「12月」という具体的な時期が示されたことで、抑止の地図が書き換わる予感が広がっている。
初実戦の記憶と演習の現実――射程が可視化される瞬間
記憶をたどれば、2024年11月21日が転機だった。ロシアはこの日、ウクライナ中部ドニプロの防衛関連施設を狙い、新型の中距離弾道ミサイルを初めて実戦投入したと発表した。今回の打撃を「実験的攻撃」と位置づける説明もあり、速度や迎撃困難性を強調する言葉が並んだ。被害状況の全容はなお断片的だが、ミサイルの存在感が一気に具体を帯びた瞬間だったといえる。
そして2025年9月、ロシアとベラルーシの合同演習「ザパド」が始動した。参加兵力は1万人規模を超え、核使用計画の想定訓練に加えて、ベラルーシに配備予定の最新ミサイルの使用計画にも習熟すると伝えられた。演習の現場で想定が繰り返されるほど、兵器の運用像は肉付けされる。机上の想定から現場の手順へ、距離の縮まり方が早い。
周辺国の反応も静かではない。隣国ポーランドは国境地帯の態勢強化を打ち出し、兵力の追加展開に踏み切った。空域侵犯の懸念が続く中で、国境線の緊張は一層高まる構図だ。12月の配備が現実になれば、欧州の安全保障バランスはまた一段揺れるだろう。発射台が置かれる場所、標的選定の権限、運用ルールの透明性――小さな積み重ねが抑止の信頼を左右すると映る。
