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掘削機の背後で青いパネル列が発電を始めた。出光興産の豪州・ボガブライ石炭鉱山で、敷地内の太陽光発電が2025年9月下旬に立ち上がり、10月9日に公表された。次の一手は12.6MWhのバナジウムフロー蓄電池(VFB、電解液にバナジウムを用いる蓄電技術)の導入だ。夜間の電力を蓄え、鉱山運営の低炭素化を実装する「昼と夜」をつなぐ計画である。
現場で動き出した電力
発電設備は最大5MWの出力で、日中の需要を自家消費で置き換える。公表によれば、運用初年度のCO2排出は約5000トン削減し、購入電力に伴うスコープ2(購入電力由来の排出)を年率で4割低減する見通しだ。鉱山の主要設備は電力需要の変動が大きいが、日射のピークに合わせた発電が操業の安定に寄与し、外部電源への依存を抑える。
現場の狙いは単なるコスト圧縮にとどまらない。電力の自給比率を高めることで、系統価格の高い時間帯の調達を避け、将来的な設備の電動化に備える布石となる。従来の「採掘=化石燃料」という固定観念に、まず昼の時間帯から変化を持ち込む設計である。
夜に効く蓄電、VFBという選択
導入が承認された蓄電池は12.6MWhで、約6時間超の放電に対応する計画だ。日中の余剰電力をため、夕方から夜に放電する。出力は約2MW規模を想定し、太陽光の変動を平準化して負荷に沿う。VFBは電解液を循環させて充放電する構造のため、劣化が緩やかで長寿命・高い安全性を持つ。容量(kWh)と出力(kW)を独立に設計でき、鉱山のように季節や操業で需要が揺れる現場に合わせやすいのも特徴だ。
この設備は稼働すれば豪州で最大級となり、運用開始は2026年末が目標とされる。電解液は豪州の関連会社が出資するヴェッコが国内製造拠点から供給し、長時間の放電に向いた蓄電技術を地域の供給網と結びつける。蓄電が加わることで、日中に偏る再生可能電力を夜間に移し替え、系統の高需要帯での化石燃料依存を和らげる役回りを担う。
供給網を近づける動き
背景には、バナジウムの“地産地用”を進める動きがある。出光は2024年12月、豪州のヴェッコに過半出資し、鉱石から電解液までを国内でつなぐ構想を明確にした。ヴェッコは2023年から商業規模の電解液製造を始めており、鉱山に近い場所で材料を調達できる体制が整いつつある。原材料の輸送を減らし、プロジェクトのリードタイムやコストの安定にもつながる布陣である。
一方、蓄電池の選定では、安全性と長寿命を軸にしたVFBの採用が要となる。VFBは熱暴走のリスクが低く、充放電を繰り返しても性能劣化が小さいとされる。必要に応じてタンクを増設して容量を拡張できる拡張性も、長期操業が前提の鉱山に適している。供給網の近代化と技術選択を重ねることで、設備全体のアップデートが進む。
鉱山運営の設計が変わる
太陽光とVFBの組み合わせは、現場の電力設計を段階的に変える。まず昼の自給を固め、蓄電で夜に橋を架ける。これにより、電力価格の高い時間帯の系統依存を抑え、需要ピークを越える運転がしやすくなる。将来は送配電の混雑緩和や、鉱山設備の電動化(ダンプや破砕設備の電化)を支える基盤にもなりうる。鉱業の現場が、再生可能エネルギーの使い方を“実地”で示すモデルになる意義は小さくない。