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小雨が上がった午後、都内のBYD販売店は静かだった。欧州で存在感を強める中国EV大手も、日本では思うように伸びていない。2023年1月の参入から2年半、2025年6月末までの累計登録台数は5,305台。販促の切り札として最大100万円の値引きにも踏み込むが、価格だけでは崩れない壁もある。日本のEV定着の難しさと、ブランド構築の長期戦が浮かぶ。
数字が映す足踏みと、広がる網
2025年7月7日、BYD Auto Japanは6月の登録台数が512台となり、単月で過去最高を更新したと公表した。2023年1月の販売開始からの累計は6月末時点で5,305台。勢いは出てきたが、台数の桁はまだ小さい。輸入車のランキングで顔を出しつつも、市場全体の潮流を左右する規模には届かないと映る。
拠点網は着実に広がっている。6月末時点で全国に63拠点(正式店舗42店)を構築し、2025年末までに100拠点を掲げる。モデルもハッチバック、セダン、SUVの4本柱が揃い、サービス体制の強化も並行する。販売とアフターを同時に磨く総合戦で、ブランドの「居場所」を確保しようとする動きが見える。
商品計画も長い射程だ。2026年後半には日本専用設計の軽EV導入を決定しており、生活圏に深く入り込む「軽」から支持を積み上げる構えである。短期の販売効率だけでなく、国民車的セグメントで存在感を示せるかどうか。勝負はこれから、とみられる。
値下げと補助金の合わせ技、その効き目と揺らぎ
9月29日の報道によれば、BYDは日本で最大100万円のディスカウントを掲げ、政府や自治体の補助と組み合わせれば定価の半額近くまで実質負担が下がるケースもあるという。主力SUV「ATTO 3」の価格帯は420万円前後とされ、値引きと優遇策で裾野を広げる狙いだ。価格で扉を開く戦術である。
一方で、値下げは両刃の剣でもある。早期購入者の「高値づかみ」感情を誘発しやすく、中古車の残価形成を不安定にする懸念がつきまとう。電池劣化への安心や保証の厚みが残価に効くのは確かだが、値付けの一挙手一投足がブランドの信頼に直結する日本市場では、短期の量と長期の信用をどう両立させるかが問われる。
補助金は追い風だ。国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金に加え、自治体の上乗せもあるため、購入時の負担は軽くなる。ただし適用条件や金額は車種や地域で異なり、年次で制度の見直しも続く。価格表示と実質負担の差を丁寧に伝え、購入後の価値をどう守るかまで含めた説明責任が重くなる局面といえる。
「難所」で残す爪痕という発想
日本は国内大手へのロイヤルティーが強く、ハイブリッドが根強い。航続や充電環境への慎重姿勢も相まって、EVはまだ多数派ではない。だからこそ、外資が短期の販売曲線だけを追うと消耗戦に陥る。誰に有利な勝負か。偶然ではなく必然として、長期投資の構図を組めるかどうかが成否を分ける。
BYDは販売だけに寄らない布石を打つ。アフターの拡充や電池保証の延長といった「安心の制度化」を前面に出し、6月には登録台数の連続最高を背景にネットワーク拡大を加速させた。売って終わりではなく、乗り続けてもらう仕組みを積み上げることで、残価やブランド評価にも波及させたい思惑がにじむ。
最終的に測られるのは、販売台数の多寡だけではないはずだ。要求水準の高い日本で、品質とサポートを継続的に示せるか。2026年後半の軽EV導入までの時間は、信頼を積むための準備期間でもある。値札の訴求力を超えて、地道に「爪痕」を残せるか。日本市場の難しさは、その問いに真正面から向き合わせている。