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米石油大手シェブロンが、制裁対象となっているロシアの石油会社ルクオイルの海外資産の一部取得を検討していることが明らかになった。複数の関係者が2025年11月17日に証言したもので、ウクライナ戦争に絡む制裁の中で、誰がこれらの資産を引き継ぐのかという静かな争奪戦が始まりつつある。
シェブロンが検討するルクオイル海外資産とその狙い
関係者によると、シェブロンはルクオイルが保有する世界各地の資産のうち、同社の既存事業と重なる分野を中心に取得の可能性を探っている。対象とされるポートフォリオ全体の規模は約200億ドル超とされ、同社はあくまで一部を選び取る形での参加を模索している。ルクオイルは自ら海外資産の売却方針を示しており、買い手探しを公然と進めている。
ルクオイルは欧州に3つの製油所を持ち、中央アジアや中東、アフリカなどの油田にも権益を保有している。中にはカザフスタンの大型油田やナイジェリア沖の鉱区のように、すでにシェブロンや他の欧米企業と共同で開発が進む案件も含まれる。シェブロンが重複分野に絞り込もうとするのは、こうした既存のパートナー関係やインフラを生かしやすい案件に狙いを定めているからだと受け止められる。
同社は取材に対し、自社の事業に適用される法律や規制を順守しており、個別の商業案件にはコメントしないと述べるにとどまった。表向きは慎重な態度だが、制裁企業の資産をどう切り離し、実務上のリスクを抑えながら取り込むかは、今後の成長戦略に関わる重要なテーマになっている。今回の検討は、その試金石ともなりうる動きだ。
制裁下の売却プロセスが映すエネルギー市場の変化
今回の動きの背景には、米財務省が先週、制裁対象となったルクオイルの海外資産について、買い手候補が同社と交渉することを限定的に認めたことがある。ウクライナ戦争を巡る制裁でルクオイルとロスネフチの米国内資産は凍結対象となり、米企業との取引も原則禁止となったが、海外資産の売却交渉という例外が設けられた形だ。制裁の圧力を維持しつつ、エネルギー供給の混乱を避けたいという思惑がにじむ。
ルクオイルは世界全体の産油量の約2％を担うとされ、そのうち海外事業が生み出す量は0.5％分に相当する。海外資産の価値は最新の提出書類に基づき約220億ドルと推計され、単に1社の撤退にとどまらない規模になっている。こうした資産をめぐり、シェブロンのほか米プライベートエクイティ大手カーライルなど複数のプレーヤーが関心を示しているとされ、市場では静かな競争が進んでいる。
ルクオイルの海外拠点には、欧州の製油所や、世界各地に広がるガソリンスタンド網も含まれる。運営が新たな所有者に引き継がれれば、利用者にとっては看板や資本の出所が変わるだけに見えるかもしれないが、背後では制裁やコンプライアンスを巡る条件が細かく織り込まれていく。どの資産が誰の手に渡るのかは、エネルギーの流れだけでなく、制裁がどのように実務へ落とし込まれていくのかを映す鏡にもなっている。
