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巨大なタンカーが出入りする中国の沿岸では、10月も黒い液体の流れが止まらなかった。税関総署が20日に公表した統計では、同月の原油輸入が前年同月比8.2%増の4836万トンと、引き続き高い水準を示した。世界最大の原油買い手は、価格や制裁、地政学の波を受け止めながら、供給元の顔ぶれを静かに入れ替えている。
ロシア減速の陰で、中東と新興産油国が台頭
まず目を引くのは、最大の供給国ロシアの位置づけだ。10月のロシア産原油の輸入量は911万トンで、前年同月から7.3%減った。それでも月次では今年の最高水準であり、割安なロシア産に依存する構図は崩れていない。一方で、制裁や輸送リスクを意識したのか、イラン産原油の積み替え拠点とされるマレーシア経由の輸入は36.1%減の480万トンに縮小した。
その隙間を埋めつつあるのが、中東産と新興サプライヤーである。サウジアラビアからの輸入は702万トンと前年同月比21.4%増え、中国にとって2番目の供給国として存在感を維持した。アラブ首長国連邦からは382万トンと86%の大幅増で、およそ1年7か月ぶりの高水準となった。さらにクウェートからの調達も236万トンと142.4%増え、2023年10月以来の高さを記録している。
遠方からの原油も着実に増えている。ブラジルからの輸入は357万トンで、前年同月比21.8%の増加だった。インドネシアからは154万トンと、前年の約10万トンから一気に伸びている。こうした多様化の一方で、米国産原油の輸入は5か月連続でゼロが続き、かつての主要供給国との距離の取り方の変化がにじむ。
在庫積み増しと精製の攻防、中国の読み
数量の裏側では、中国の読みの細かさも浮かび上がる。税関統計と民間推計を組み合わせると、10月の原油輸入は日量約1140万バレルと前月比2.3%増えた一方、国内の精製量はそれを下回ったとされる。その結果、日量およそ69万バレルが在庫として積み増され、年初からの累計でも在庫取りが続いているという。価格が落ち着いた局面で買いを厚くし、高値局面で手控えるというパターンが改めて確認された形だ。
輸入の強さは、国内の製油所の動きとも結びつく。10月の製油所稼働率は今年最も高い水準となり、とりわけ国有大手がマージンの改善を受けて処理量を増やしたと分析されている。国有勢は民間製油所から国内シェアを奪い、同時に輸出枠を使い切る狙いもあるとされる。こうした競争は、どの産地の原油を優先的に仕入れるかという判断にも影響し、サウジアラビアやイラクからの到着量が一時的に減ったとの見方も出ている。
多様な産地からの流れが交錯するなか、中国全体の原油輸入は1~10月累計で前年比3.1%増の471百万トンに達した。表面上は安定した数字だが、その内訳ではロシア依存と中東シフト、新興産油国の台頭、そして米国との距離感が絶えず組み替えられている。港に並ぶタンカーの向きは、世界のエネルギーバランスの微妙な揺れを静かに映している。
