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米通商代表部（USTR）を率いるグリア氏は7日、トランプ政権と中国政府の間で結ばれた貿易合意について、中国側が現時点では合意内容を守っているとの認識を示した。激しい関税応酬が続いた米中関係の中で、合意の履行状況を米政府高官が前向きに語るのは珍しく、今後の関税や企業の投資判断にも静かな波紋を広げている。
合意順守の評価がもたらす現場への安心感
グリア氏の発言は、中国政府がトランプ政権との貿易合意を実行に移す作業を続けており、その中で取り決めた約束は現時点では守られている、という趣旨だ。履行を一度きりの判定ではなく、継続するプロセスとして描いた点に特徴がある。
米中間の関税引き上げや輸入規制は、両国だけでなくサプライチェーンに組み込まれた日本やアジアの企業にも不安をもたらしてきた。米政府の通商責任者が「約束は守られている」と言及したことで、少なくとも短期的には、突然の追加関税や合意破綻が起きにくいとの見方が一部の企業の間で広がりつつある。
もっとも、今回の評価はあくまで「いまのところ」の状況を示したにすぎないうえ、貿易合意には輸入額や市場開放など多くの項目が含まれ、期日ごとに進捗が点検されるのが一般的だ。企業にとって重要なのは、こうした点検の結果がどのような政治判断につながるのかであり、合意順守の評価が続くのかどうかを慎重に見極めることだ。
評価と牽制が同居する米中貿易関係のいま
グリア氏は、中国の対応について「これまでのところ」という言い回しを用い、今後も監視を続ける姿勢をにじませた。貿易合意の履行は、統計上の数字だけでなく、技術移転のあり方や補助金政策など幅広い分野にまたがるため、米側は継続的に対話や点検の枠組みを維持する必要があるとみている。
ロイター通信によると、2025年10月には米通商代表部が、2020年の米中「第1段階」合意の履行状況を巡り新たな調査を開始した経緯もある。また別の報道では、米財務長官が中国による農産物購入などの約束は達成に向かっていると発言したとされるなど、米政権内部でも強硬な姿勢と関与を続ける路線が交錯している。
今回の「約束は守られている」との発言は、短期的には市場や企業に一定の安心感を与える一方で、米中がどの程度まで相互依存を許容するのかという根本的な問いを解いたわけではない。合意履行の評価は今後も政治情勢や安全保障上の懸念に左右されうる。企業や投資家、そして日本を含む第三国の政府は、この発言を米中関係の流れを読むための一つの手掛かりとして受け止め、過度な楽観にも悲観にも傾かない備えが求められている。
参考・出典
- US trade with China probably needs to be smaller, USTR's Greer says
- Bessent: China is reaching 'correct cadence' to complete promised US soybean purchases
- US launches investigation into China's compliance with 2020 trade deal
- USTR Finalizes Tariffs on $200 Billion of Chinese Imports in Response to China’s Unfair Trade Practices
- Trump trade rep sets low bar for China trade talks, no 'enormous breakthrough' expected
