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担当者の手元に届いた説明資料には、許可申請欄の簡素化と新たな有効期間が記されていた。中国がレアアース輸出の新ライセンス制度の設計に入ったとの見方が業界に広がる。手続きの迅速化が期待される一方、4月に導入された広範な輸出規制の撤廃には直結しないとの声が多い。企業は年末に向けて準備を急ぎ、顧客にも追加情報の提供を求め始めている。
企業の現場で進む準備
関係者によると、中国商務省は一部の輸出業者に対し、将来的に許可申請を簡素化する方針を非公式に伝えたという。業界向けの説明会では必要書類の概要が示され、出荷ごとに重ねていた確認作業をまとめて処理できる運用案が話題に上った。現時点で確認されている範囲では、提出様式の統一や審査フローの短縮が軸になりそうだが、最終形はまだ固まっていない。
複数の関係者は、新制度の実施までに数か月を要する可能性を指摘する。新たなライセンスは有効期間が1年となる案が浮上しており、再申請の頻度が下がれば、出荷計画や在庫の設計に余裕が生まれるとの見方が出ている。一方で、防衛など機密分野に関わるユーザーは審査が厳格化し、許可取得が難しくなるとの観測が根強い。
制度変更の通知をまだ受けていない企業もある。現場では、最終用途や組込先の仕様をより詳しく示すよう顧客に求める動きが広がり、販売契約や技術情報の取り扱いを巡る実務の見直しが始まった。年末にかけ制度の輪郭が明確になれば、長期の引き合いに対する見積もりや納期の提示も安定してくるとの期待がにじむ。
制度の狙いと国際交渉の接点
中国は2025年10月9日にレアアース関連品目の輸出管理を公表している。商務省は、管理は輸出禁止ではなく、適法な民生用途の申請には許可を与える方針を示したうえで、一般ライセンスや免除の適用可能性を検討すると説明してきた。審査の趣旨は安全保障上のリスク管理にあり、制度の整備はその延長線上にあると受け止められている。
さらに6月26日には、商務省の報道官が関連ライセンス申請の審査を加速していると明らかにし、一定数の適法な申請を既に承認したと述べた。管理の対象は軍民両用の特性を持つ品目で、手続きは続くものの、適法な取引の円滑化を図る姿勢が示されている。今回の設計作業は、その具体化として位置づけられる可能性がある。
国際交渉の場でも動きがあった。2025年11月4日、欧州当局は中国側とレアアース供給の安定化や一般ライセンスを含む手続きの円滑化を協議したと説明した。報道では、米側が中国による一般ライセンス発給の見通しに言及したとされ、制度設計の進展が外交の論点とも重なり始めている。もっとも、管理の枠組み自体が緩むとの受け止めは広がっていない。
供給網への影響と読み筋
新ライセンスが導入されれば、民生用途の定常的な出荷は手続きの見通しが立ちやすくなる。1年の有効期間が実現すれば、契約や物流の計画期間とそろえやすく、在庫負担の平準化にもつながる可能性がある。一方で、感度の高い最終用途に向けた案件は、申請書類の精密化やトレーサビリティの強化が求められ、審査が長期化する局面も想定される。
鉱石から磁石まで多段の工程を持つレアアースの供給網では、1つの遅延が下流の工場稼働に波及する。各社は、既存の在庫日数や調達の分散度合いを見直し、代替材の検討や前倒し発注といった備えを重ねている。ライセンスの簡素化が進めば即納品の比率は高まるが、管理の趣旨が変わらない以上、案件ごとの差は当面残るだろう。
制度の実装時期はなお不透明だが、年末にかけ運用細目の説明が増えるとの見方が多い。一般ライセンスが具体化すれば、都度申請の事務負担は軽くなる一方、最終用途の審査や企業の内部統制は一段と精緻さを求められる。規制の骨格は維持され、運用で流れを整える。足元の市場は、その静かな変化に合わせて呼吸を整えようとしている。
