本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
中国の金融業界団体が現地時間5日、仮想通貨を巡る違法行為への警戒を強める共同声明を公表した。声明は、仮想通貨やRWA(Real-World Asset)トークンの発行・取引に国内組織として関与しないよう強く求める内容で、中国インターネット金融協会のSNSに掲載された。なぜ中国は今、RWAトークンまで名指しして「ゼロ容認」の姿勢を示したのか。その背景と影響をたどる。
投資家と企業に突きつけられた「ゼロ容認」方針
今回の声明には、中国の銀行業協会や証券業協会、先物業協会、決済・清算機関の団体など、金融インフラを支える業界団体が名を連ねた。彼らは、仮想通貨やRWAトークンに関するビジネスを行わないこと、関連する宣伝や技術支援にも関わらないことを、会員機関に対して改めて促している。中国インターネット金融協会の投稿を紹介するChainCatcherなどによれば、背景には、ステーブルコインやエアドロップコイン、マイニング名目の投資案件を利用した詐欺や違法な資金集めの急増があるとされる。
影響を最も強く受けるのは、中国本土でデジタル資産ビジネスを模索してきた金融機関やフィンテック企業だ。近年、一部の証券会社や銀行グループは、香港でのRWAトークン化や暗号資産関連サービスを検討してきたが、ロイターは9月、中国証券監督管理委員会が香港でのRWAビジネスを一時停止するよう一部ブローカーに非公式に伝えたと報じている。こうした動きと今回の声明が重なることで、「本土の規制線は想定以上に厳格だ」との受け止めが金融業界に広がりつつある。
個人投資家へのメッセージも明確だ。中国では2021年以降、仮想通貨取引やマイニングが段階的に禁止されてきたが、海外取引所やOTC取引を通じて投機に参加する人はなお存在するとみられる。Odaily Planet Dailyが伝えた今回のリスク警告では、仮想通貨やRWAトークンを使った「高利回り」をうたう案件や、マイニングを装った出資勧誘への参加を控えるよう国民にも呼びかけている。投資家にとっては、「損失リスク」だけでなく「違法行為に巻き込まれるリスク」も一段と意識せざるを得ない局面だ。
香港や日本が進めるRWAと、中国本土の慎重姿勢
RWAトークンとは、現実の資産や権利をブロックチェーン上のトークンとして表現する仕組みの総称である。不動産や社債、売掛金、知的財産、さらにはワインやアートといったコレクターズアイテムまで、幅広い資産が対象になり得る。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、こうしたRWAトークンの発行・流通に関するガイドラインを公表し、既存の金融規制との関係を整理することで、事業者の参入と健全な市場育成を後押ししようとしている。世界的には「リスクを管理しつつ活用を模索する」方向性が主流だ。
一方、香港はデジタル資産ハブを掲げ、ライセンス制の取引所やステーブルコイン規制制度、RWAトークン化のプラットフォーム整備などを進めてきた。だがロイターによれば、2025年秋に中国当局が一部の中国系証券会社に対し、香港でのRWAビジネスの一時停止を助言したという。中国本土の規制当局は、域外であっても中国企業が関わるトークン化ビジネスの急速な拡大に神経をとがらせている格好であり、今回の業界団体による警告も、そうした慎重姿勢の延長線上に位置づけられる。
対照的に、日本では金融庁が「暗号資産交換業」の登録制度を整えたうえで、業界団体によるルール形成を通じてリスク管理を図るアプローチを採ってきた。JCBAのRWAトークン・ガイドラインも、その枠組みの中で利活用の余地を探る試みだ。中国本土のように仮想通貨関連ビジネス自体を禁じるのではなく、「どの条件なら許容し得るか」を探る姿勢と言える。ただし、いずれの国・地域でも、マネーロンダリング対策や投資家保護が大きな課題となっている点は共通しており、中国の強硬なスタンスは、世界的な議論に一石を投じる面もある。
デジタル資産ビジネスはどこまで許されるのか
今回の警告は、直前に中国人民銀行(PBOC)が示した強いメッセージとも響き合う。ロイターやニューズウィーク日本版によると、人民銀行は11月末の声明で、仮想通貨は法定通貨と同じ法的地位を持たず、関連ビジネスは「違法な金融活動」だと改めて強調した。特にステーブルコインについては、顧客確認やマネーロンダリング対策の不備を理由に、資金洗浄や無許可の越境送金に使われるリスクを指摘している。業界団体によるリスク警告は、中央銀行の姿勢を民間サイドに浸透させる役割も担っているとみられる。
こうした状況の下で、中国の銀行や証券会社、決済事業者にとって、安全策は「仮想通貨やRWAトークンに直接も間接も関与しない」方向に傾きやすい。一方、世界の金融市場では、国債や不動産、ファンド持分のトークン化が進み、RWA関連市場が急成長しているとの調査もある。中国勢が完全に距離を置けば、グローバルな実証や商品設計の場から取り残されるリスクも小さくない。そのため、許容されるのは、デジタル人民元や、トークンを伴わないブロックチェーン活用など、国家主導の枠組みに限定されるとの見方が出ている。
投機や詐欺を抑えたい当局と、デジタル化の波に乗り遅れたくない市場参加者。その綱引きの中で、中国本土は当面、「リスクを取って先行するよりも、厳格な統制で安定を優先する」選択を続けそうだ。コストを負担するのは、事業機会を失う企業や、正規ルートでデジタル資産にアクセスできない投資家だが、世界的にトークン化が広がるなかで、この防波堤がどこまで持ちこたえるのかは、今後も注視が必要である。
