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ドイツの連立与党が、激しい議論を呼んだ年金法案について下院での承認を確保した。政権発足からわずか7カ月で迎えた大一番で、薄氷の多数派崩壊という最悪の事態はひとまず避けられたかたちだ。だが、造反をちらつかせた若手議員たちの背後には、将来世代の負担への不安と連立運営の綻びがくっきりと映っている。
若手議員の反発ににじむ、将来世代の負担感
メルツ首相が率いるキリスト教民主・社会同盟（CDU・CSU）では、今回の法案を巡り若手議員およそ18人が反対の姿勢を示した。ロイターやAP通信は、彼らが将来の財政負担の増大を理由に法案に異議を唱えていると伝える。造反が現実になれば、連立与党の過半数は一気に危うくなる状況だった。
年金制度は高齢者の生活を守る一方で、現役世代が保険料や税で支える「世代間の契約」だ。ロイターによれば、今回の改革は年金水準を賃金の48%程度に維持する方針で、今後15年で総額1,850億ユーロ規模の追加負担が見込まれるという。こうした数字は、若い有権者にとって将来の保険料や税負担の重さを具体的に想像させ、若手議員の迷いとも重なっている。
薄氷の多数派と連立運営、問われる次の一手
ドイツ連邦議会で連立与党が握る議席は、過半数をわずか12上回るだけにすぎない。この年金法案は、連立パートナーの社会民主党（SPD）が主導してきた公的年金の底上げ策だ。SPDは内容の後退を嫌い、メルツ首相は自党内の懐疑派をなだめつつ連立維持を図るという、難しい綱渡りを迫られてきた。
AP通信は、与党幹部が若手議員に対し、2026年半ばまでに追加の改革案を示し、長期的な持続可能性を改めて協議すると約束したと報じている。政権の危機はひとまず回避されたが、高齢者の安心と若い世代の負担感をどう両立させるのかという難問は、これからも連立政権に重くのしかかりそうだ。
