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会場の通路に警報音が鳴り響き、人の列が出口へと押し寄せた。2025年11月20日、ブラジル北部ベレンで開かれている国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の会場で火災が発生し、交渉の場は一時、避難指示に追われる非常事態となった。主催者によると、火はおよそ6分で消し止められたものの、煙を吸い込んだ13人が手当てを受けたという。
交渉の中心「ブルーゾーン」で起きた突然の火災
火元とみられているのは、各国が自国の取り組みを発信するパビリオンが並ぶ「ブルーゾーン」の一角だ。現地時間の午後、天井付近から黒い煙が上がり始め、警備員が笛と拡声器で退避を促すと、屋内で会合を開いていた各国代表や市民団体の担当者らが一斉に外へ走り出した。大会には5万人規模が参加しており、日本から出席していた石原宏高環境相ら代表団も周囲の人々とともに避難した。
主催者と地元消防当局によれば、通報から約6分で火は制圧され、大きな構造被害は確認されていない。会場内で煙を吸った13人は、その場で酸素投与などの処置を受け、重いけが人はいないとされる。一方で、出火原因は未解明で、発電機や電子レンジなど電気機器のトラブルが疑われるとの見方も出ており、当局が詳しい状況を調べている。ブルーゾーンの一部エリアは安全確認のため一時的に封鎖され、一般公開エリアの「グリーンゾーン」は通常通りの運営が続いた。
時間との競争が続く合意交渉への影響
火災が起きたのは、会期最終日の21日を前に、各国が合意文書の最終案を巡って激しくやり取りしていた時間帯だった。化石燃料からの段階的な転換をどこまで明記するか、途上国への資金支援をどう位置づけるかが主要な争点となり、会議はすでに自ら設定した19日の事実上の期限を越えて続いていた。そこへ突如として会場閉鎖と避難が重なり、多くの専門家や交渉担当者が「残された時間はさらに削られた」と受け止めている。
出火後、交渉の中枢となる会場は安全確認のため一時停止を余儀なくされ、一部の会合の再開は夜までずれ込んだ。主催国ブラジルや国連事務局は、21日中の合意をなお目指すとしているが、未解決の議題が多い上に議論の空白が生じたことで、会期延長や重要案件の先送りが避けられないとの見方もある。過去のCOPでも最終盤の徹夜交渉や延長は繰り返されてきたが、今回は物理的なトラブルが直接の引き金となった点で異例だといえる。
夕暮れの会場の外では、避難を終えた参加者たちが、肌に残る焦げたにおいを感じながら、黒くすすけたパビリオンの跡を見上げていた。その視線の先には、再開を待つ交渉の行方と、自らが向き合うべき気候危機の重さが、静かに重なっていた。
