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夜のシカゴで、連邦庁舎前の群衆がひときわ大きな歓声を上げた。2025年10月10日、同市の連邦地裁がトランプ政権によるシカゴ地域への州兵派遣を2週間差し止めたためだ。移民取り締まりの強化を掲げた動員はいったん立ち止まり、連邦権限と州の自律という古くて新しい線引きが再び問われている。
法廷が踏みとどまらせた理由
判断を下したのは連邦地裁のエイプリル・ペリー判事である。弁論を経て、イリノイ州内で「反乱の危険」を裏づける信用に足る証拠は示されていないと示し、連邦政府による州兵の連邦化と展開を暫定的に止めた。効力は2025年10月24日13:59までとされ、延長の是非を検討する電話審理が2025年10月23日に設定されたとみられる。
ペリー氏は国土安全保障省が提示した現場の描写について「信頼できない」との見方を示し、州側が主張する合衆国憲法上の権限配分への懸念を重く見た格好だ。州と市は、連邦が州兵を治安目的で運用することは権限逸脱にあたると訴えてきた。政治的緊張が法廷に持ち込まれた構図が浮かぶ。
派遣計画は、シカゴ南西のエルウッドにある陸軍予備役センターを拠点に、テキサスとイリノイの州兵を含む計約500人を60日間動員するというものだった。連邦側は「連邦施設と要員の防護」が任務だと説明したが、裁判所は必要性と根拠の薄さを問題視したと映る。
街の空気と現場で起きていること
差し止めが言い渡された同日朝、シカゴ近郊ブロードビューのICE（移民・関税執行局）施設では、仮設フェンスの内側を少数の州兵が巡回し、外側には抗議のプラカードが揺れていた。前夜には車両で仮眠を取る兵士の姿もあり、臨時の配備が街の鼓動に直接触れ始めていた。
司法省の弁護士は、連邦職員や施設への敵対行為が続き「反乱の危険」があると強調した。しかし法廷は、その評価を支える具体性と整合性に疑義を呈し、政治的主張が治安判断に先行していないかを問うた。緊張のただ中で、住民の抗議と連邦の論理が交錯している。
さらに同日、別件でサラ・エリス連邦地裁判事が、北イリノイ全域での連邦捜査当局による武器や物理的強制の行使を制限し、職員に可視的な身分表示を義務づける仮の差し止めを出した。現場での摩擦を抑え、記者や非暴力の参加者を守る狙いがにじむ。
広がる法廷闘争と次の焦点
シカゴと並行して、西海岸でも攻防が続く。カリフォルニア州サンフランシスコの連邦高裁は、オレゴン州ポートランドに対する州兵派遣をめぐり、連邦政府の権限行使の当否を審理した。今週初めには、オレゴンの派遣を止める仮の差し止めが出ており、複数州が意見書で相次いで参戦している。
背景には、軍の国内法執行を厳しく制限するポッセ・コミタトゥス法と、大統領が暴動鎮圧のために軍を投入できる反乱法のせめぎ合いがある。今回の差し止めは「反乱」認定のハードルと州権の尊重に重きを置いた判断といえる。命令の延長可否が決まる2025年10月23日へ、次の一手が注目される。
