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米国のスコット・ベセント財務長官は11月28日、トランプ大統領の指示を受け、違法滞在の移民に対する連邦税控除型の給付を打ち切る準備を進めていると明らかにした。税制上の支援を米国市民らに限定する狙いで、移民政策と社会保障をめぐる新たな火種になりつつある。
支えだった税控除が、移民家庭にはしご外し
米国の低所得層を対象にした「勤労所得税額控除」（EITC）や「追加子ども税額控除」などの給付付き税額控除は、賃金の低い家庭にとって現金給付に近い安全網となってきた。ベセント氏の方針が実施されれば、適法な在留資格を持たない労働者や家族は、これらの還付の大半を将来失うおそれがある。
新たな規則は2026年分の申告から適用される見通しで、制度の転換まで時間的な猶予はあるが、現場では早くも動揺が広がる。市民権を持つ子どもと、在留資格のない親が同じ家庭にいる「混在家族」では、どこまで給付が認められるのか不透明だ。送金業者への監視強化も同時に打ち出されており、母国に仕送りを続けてきた移民労働者は、金融システムから排除される不安を口にしている。
法解釈を武器に、税制から締め出す狙い
財務省が公表した文書によると、今回の規則案は、還付される部分の税額控除を1996年制定の「福祉改革法」が定める「連邦公的給付」に明確に位置づける。そうすることで、同法が原則として対象外とする違法滞在者や一定の非市民を、税控除を通じた給付から一括して排除する狙いだ。ベセント氏は声明で「納税者の資源を、法的に受給資格を持つ人だけに向ける」と強調し、税制の公正さを掲げた。
この動きは、トランプ大統領が「第三世界」と呼ぶ国々からの移民を事実上停止し、既存の非正規移民への給付を打ち切ると宣言した一連の強硬策の一部でもある。保守系シンクタンクは、違法滞在者が所得税控除を通じて毎年数十億ドル規模の給付を受けていると推計しており、政権はこうした数字を根拠に「法の厳格な適用」を訴える。一方で、長年にわたり社会保障をほとんど受けないまま税金だけを納めてきた移民も少なくなく、単純な損得勘定では割り切れない構図がある。
税務行政が担う「境界線」はどこまでか
税務当局は本来、移民当局とは別に、中立的に申告と徴税を担う存在だとされてきた。今回のように、在留資格をもとに給付付き税額控除の対象外を細かく線引きすれば、資格に不安を抱く人ほど申告を控え、地下経済が拡大するとの懸念も専門家から出ている。税務調査や本人確認の負担は、国税当局だけでなく、税務申告を支援するボランティア団体や地域の会計事務所にも重くのしかかる。
また、給付を税制から切り離すことで生まれた財政的な余力を、誰にどのように振り向けるのかも定まっていない。政権は「米国民のために温存する」と繰り返すが、低所得層全体への支援を拡充するのか、国境管理など別の移民対策に充てるのかで、恩恵を受ける層も負担を負う層も変わる。税制を移民抑制の道具とする今回の選択が、長期的にどの程度の公平さと実効性を持ちうるのか、米社会はこれから厳しい検証を迫られる。
参考・出典
- Bessent says US Treasury working to cut off federal benefits to 'illegal aliens'
- US working to cut off federal benefits to illegal aliens: Treasury secretary
- Trump says he will cancel all Biden executive orders signed by autopen – as it happened
- Exclusive: Treasury Dept. Issues Rule to Prevent Illegals from Securing Income Tax Credits
