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JR東日本は12月9日、日本初となる荷物専用の新幹線列車を2026年3月23日から東北新幹線で走らせると発表した。山形新幹線で使われてきたE3系を7両すべて荷物用に改造し、盛岡と東京の新幹線車両センター間で平日に運転する。最大約17.4トン、1000箱規模の荷物を高速かつ時間通りに運べる新ルートは、地方の生産者や医療機関にとってどんな意味を持つのだろうか。
産地と首都圏を結ぶ、新たな高速物流
荷物専用新幹線は、E3系7両編成の全車両を荷物室に改造した列車だ。東北新幹線を走るE5系「やまびこ」と連結し、1～10号車が旅客、11～17号車が荷物を担当する。床を鉄板で平らにし滑り止めを施してカゴ台車ごと載せ、ベルトで固定することで、最大約17.4トンを一度に運べる。
JR東日本はこれまでも、新幹線の客室の一部を使う「はこビュン」で荷物を運んできたが、大口輸送は週1回・約200箱規模に限られていた。専用列車が平日に毎日走れば、従来の数倍の箱数を安定して扱え、繁忙期の増荷にも応じやすくなる。運行区間を車両センター同士に限定することで、駅ホームでの荷扱いによる混雑を避けられる点も特徴だ。
対象は、鮮魚や果物といった生鮮品、壊れやすい精密部品、納期厳守が必要な医療用品などだ。長距離トラックより走行時間が短くダイヤも乱れにくいため、地方で積んだ荷物をその日のうちに首都圏の店頭や医療現場に届けやすくなると、JR東日本や各メディアは説明している。喜勢陽一社長も、地元の生産者が東京市場にアクセスするための手段として使ってほしいとの考えを示している。
鉄道が担う物流インフラ、その狙いと課題
背景には、鉄道を物流インフラとして生かそうとするJR東日本の戦略がある。「はこビュン」を地域の産品と都市の市場を結ぶ手段としつつ、トラック運転手不足や環境負荷の低減にも役立てたい考えだ。盛岡と東京の車両センター内では、AGVと呼ぶ無人搬送車を走らせて荷物を自動搬送し、積み降ろし作業の負担を抑える仕組みも導入する。
2026年2月に荷物受付を始め、当初は盛岡～東京間で平日1日1便だが、仙台や新潟からの輸送にも広げたいとしている。JALグループと連携し、成田などからアジア各都市へ荷物を送る「JAL de はこビュン」も予定される一方、旅客列車との線路容量や安定した荷量の確保は課題だ。トラックに代わる万能薬ではなく、高品質輸送を求める荷主の新たな選択肢として定着できるかが、地域物流とJR東日本の挑戦を占う焦点になっていく。
