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佐賀大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、佐賀大発ベンチャーのダイヤモンドセミコンダクターは、ダイヤモンド基板を用いた高周波半導体デバイスを開発した。マイクロ波帯(3~30GHz)からミリ波帯(30~300GHz)まで信号を増幅でき、オフ状態の耐圧4266V、電力利得の遮断周波数120GHzという性能を実現したと説明している。いずれもダイヤモンド半導体として世界最高水準とされ、衛星通信やBeyond5G/6G基地局に向けたキーデバイス候補が一歩前進したかたちだ。
広帯域を1チップで担う、新しい「送信の心臓部」
今回のデバイスは、電波の主力帯域であるマイクロ波と、その先のミリ波を1つの素子でカバーできる点が特徴だ。従来は用途ごとに素子や真空管を切り替える必要があったが、120GHzまで電力利得が得られることで、衛星の送信機から地上の高周波アンプまでを同系統の技術でそろえる構想が現実味を帯びてきた。特に6Gでは100GHz級の帯域利用が議論されており、1チップで広い周波数を扱える利点は大きい。
高い性能の背景には、ダイヤモンドの物性と微細加工技術の両立がある。研究チームは電子線描画により長さ157nmのT型ゲート電極を形成し、ゲート絶縁膜の材料を高純度化することで、オフ時4266Vという高い耐圧を引き出した。さらに硬いダイヤモンド基板に適したワイヤボンディングやパッケージ技術も整え、試作したおよそ100個の素子の多くが目標周波数に達したと報告されている。これにより、単なる実験室レベルを超えた、応用を見据えた段階に入りつつある。
真空管から固体素子へ、宇宙・6G応用の次の一手
放送局や衛星通信用の送信機では、いまもクライストロンや進行波管といった真空管が主役で、高周波かつ大電力を同時にこなせる半導体は限られている。近年は窒化ガリウム(GaN)素子が真空管置き換えの有力候補となってきたが、100GHz級まで余裕を持って扱える材料として、より広いバンドギャップと高い絶縁破壊電界をもつダイヤモンドへの期待が高まってきた。佐賀大学はこれまでにもダイヤモンドパワー回路で高速スイッチングや長時間連続動作を実証しており、今回の高周波デバイスはその延長線上に位置づけられる。
今回の成果は、内閣府の「宇宙開発利用加速化戦略プログラム」や情報通信研究機構(NICT)のBeyond5G基金事業など、公的支援を受けた5カ年計画の中で得られた。研究グループは2026年初頭からサンプル出荷を始め、宇宙機や地上局での実証を進める計画だという。とはいえ、結晶サイズの大型化や製造コスト、長期信頼性など、社会実装に向けた課題はまだ多い。真空管や既存半導体とどう棲み分けるのか、ダイヤモンドがどの用途から本格採用されるのかが、今後の焦点になりそうだ。
