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デジタル庁は12月2日、行政向けAI基盤で使う国内開発の大規模言語モデル(LLM)の募集を始めた。 応募は2026年1月30日まで受け付け、人口減少で人手が細る行政の仕事をAIで補う狙いだ。 すでに庁内では生成AI環境「源内」が動き始めており、今回はそこに国産LLMを組み込む一歩となる。 国産モデルの採用は、現場と産業に何をもたらすのかを見ていく。
現場の公務員にとっての“AI同僚”は何を変えるか
デジタル庁の職員は、この春から庁内限定の生成AI環境「源内」を使い始めている。 文書のたたき台づくりや条文の整理、会議メモの要約といった作業を支援する用途が想定され、これまで残業時間に押し込まれていた事務の一部をAIに回すことができる。AIは「相棒」として下書きを示し、人が内容を吟味しながら最終的な判断を下す構図だ。
背景にあるのは、中央省庁から自治体まで続く人手不足である。 高齢化が進む一方で、社会保障やデジタル化に関する制度は複雑さを増し、住民からの相談や説明の手間は減らない。窓口職員がAIに文案作成や情報検索を任せられれば、対面で話を聴く時間を増やし、住民にとって分かりやすい言葉へと練り直す余裕が生まれるとの期待がある。
今回の公募と同じ日に、政府職員向けに日本語翻訳特化モデル「PLaMo翻訳」を源内で提供する方針も公表された。 行政特有の言い回しや長文化しがちな文書を踏まえつつ翻訳できる点が評価され、外国の法令や技術資料を扱う現場の負担軽減が見込まれる。国産LLMが増えれば、日本語や行政実務に最適化したアプリケーションを横展開しやすくなり、現場の「AI同僚」はより身近な存在になっていくだろう。
なぜ今、国産LLMを募るのか 政府の思惑
今回の公募は、国内で開発されたLLMをガバメントAIで試用することを前提にしている。 12月2日から2026年1月30日までの期間に応募を受け付け、参加する事業者には、モデルの技術情報の提供や行政向けアプリとの連携に応じることなど、一定の条件を求める。 政府は自らの業務での利用を起点に性能や安全性を検証し、その成果を民間での活用拡大にもつなげたい考えだ。
すでに源内にはAnthropicやOpenAIなど海外企業のLLMが採用されており、職員は用途に応じてサービスを選べる環境にある。 それでもあえて国産モデルを募るのは、データの取り扱いや料金体系を日本政府の事情に合わせやすくするねらいがあるからだ。日本語や行政文書へのきめ細かな対応に加え、将来の契約見直しや機能追加を、国内の事業者と対等な立場で協議しやすい点も重視されている。
海外の巨大プラットフォーマーだけに依存すれば、規制の変更や価格改定がそのまま公共サービスの質に跳ね返るおそれがある。国産LLMを一定数確保しておくことは、いわばバックアップ回線を複数持つようなリスク分散策でもある。今回の公募による選定と検証を通じ、どの業務を海外製、どの業務を国産で担うのかという役割分担を見極めることが、政府側の大きな課題になっている。
国産と海外が並ぶAI基盤がもたらす波紋
国内開発LLMの募集は、AIベンチャーや研究機関にとっても大きな機会だ。行政という厳しい利用環境で試されることで、モデルそのものの性能だけでなく、説明可能性やログ管理、長期保守を含めた「総合力」が問われる。採択されれば安定した利用実績を得られる一方、セキュリティ審査や障害対応など、開発側が負う責任も重くなる。組織内データを安全に扱うための検索拡張生成(RAG)など周辺技術の成熟度も、評価の対象になっていくだろう。
ガバメントAIの利用が中央省庁から自治体へ広がれば、職員数が限られる小規模自治体こそ恩恵が大きいとみられる。定型文の作成や条例案の整理、住民向け説明資料の作成を共通基盤で行えれば、個別にシステムを導入するより負担は小さい。ただしAIの出力を吟味できるスキルや、誤りがあった際に責任を負う体制が整わなければ、現場の不安をかえって高めかねない。国産と海外のLLMが並び立つガバメントAIをどう設計し、誰がそのコストとリスクを担うのか──今回の公募は、その問いへの最初の実験台となる。
