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「DOGEはもう存在しない」。ワシントンで今月開かれた会見で、人事管理局（OPM）のトップ、スコット・クーパー氏がそう言い切ると、会場には一瞬ざわめきが走った。第2次トランプ政権の看板として誕生した政府効率化省（DOGE）は、発足から1年を待たずに、静かに幕を下ろそうとしている。
看板政策DOGE、予定より早い幕引き
DOGEは2025年1月20日、第2次トランプ政権の就任と同じ日に大統領令で設置された。既存のデジタルサービス組織を再編し、各省庁に「DOGEチーム」を送り込んでITや業務を見直す仕組みで、連邦政府の生産性向上と支出削減が掲げられていた。当初は2026年7月4日までの時限組織とされたが、その寿命は18か月よりもさらに短くなった。
米メディアの報道では、今秋以降、政府は正式な廃止宣言を出さないまま、DOGEの職員や案件を人事管理局などに段階的に移してきたという。今月、クーパー局長が議会で「DOGEは存在しない」と述べたことで、実態として組織が解体されていることが公に確認された。かつては各省庁の予算や契約に強い影響力を持ったチームが、役割だけを残して姿を消しつつある。
マスク氏の野心と揺らいだ「1兆ドル削減」
この取り組みの顔となったのが、起業家イーロン・マスク氏である。氏は大統領選後、自身のSNSで政府の無駄を1兆ドル削減すると豪語し、トランプ氏の信任を得てDOGEのトップに就いた。連邦職員の大量解雇や補助金、外交支出の大幅カットなどを矢継ぎ早に進め、DOGEは約2000億ドルを節約したと主張したが、裏付けとなるデータは乏しく、議会や専門家からは誇張だとの批判が相次いだ。
どの分野を最優先で守り、どこまで削るのかをめぐって、マスク氏とトランプ大統領の溝は次第に深まった。特別政府職員として働ける期間の上限も重なり、同氏は2025年5月に政権を去る。主要メンバーも追うように離任し、DOGEが打ち出した雇用凍結などの看板施策は次々と終息した。しかし、税務や保健医療、外交現場には人員不足や事業縮小の余韻が残り、効率化を掲げた実験の跡を静かに物語っている。
