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例年より1か月早く広がるインフルエンザの陰で、今季の主流株の約96%が新たな変異株「サブクレードK」だと厚生労働省などが公表した。感染しやすい一方で重症度は従来並みとされるこのウイルスは、この冬の生活や備えをどこまで変えるのだろうか。
早い流行で学校も職場も緊張続く
国内の定点医療機関からの報告では、この秋のインフルエンザ患者数が14週連続で増え、39都道府県で警報レベルに達している。年末前から学級閉鎖や仕事の欠勤が相次ぎ、例年より早いペースに現場の緊張が続く。医療機関では発熱外来の枠が埋まりやすくなっている。
背景にあるのが、今季のA香港型ウイルスの大半を占める「サブクレードK」だ。国立健康危機管理研究機構が9月以降に集めた23検体を解析したところ、22検体がこの型だったといい、保育園や介護施設では一人の発症から一気に広がるケースも聞かれる。
高熱やせきに加え、吐き気や下痢といった症状が目立つ患者も多く、保護者からは「コロナとの違いが分かりにくい」との声もある。仕事や受験を控えた家庭では、誰か一人の罹患が予定全体を組み替える引き金になりつつある。
一方で、自治体は換気の徹底や加湿器の活用など、コロナ禍で整えた設備を活かしながら集団感染のリスクを抑えようとしており、現場では「慣れた対策を丁寧に続ける」ことが合言葉になっている。
新変異株の正体と広がりやすさ
サブクレードKは、インフルエンザA型のうちA香港型（H3N2）の変異株で、ウイルス表面の構造が変わったことで、過去の感染やワクチンで得た免疫をすり抜けやすいと専門家は指摘する。南半球の冬に流行し、その後ヨーロッパなどへ広がったと報じられてきた。
厚生労働省が1日に公表した分析では、今季日本で検出されたA香港型のウイルス23検体のうち22検体がサブクレードKだった。空港検疫で見つかった陽性例でも、この型が多数を占めており、海外から持ち込まれたウイルスが国内で急速に置き換わった可能性が高い。
一方で、国の研究機関の評価では、サブクレードKによる重症化リスクは従来のA香港型と大きく変わらないとされる。ワクチンは感染そのものを防ぐ力はやや落ちる懸念があるものの、高齢者や基礎疾患のある人が入院や死亡に至るリスクを下げる効果は期待できると説明されている。
ここ数年は別の型の流行が中心だったため、A香港型への集団免疫が下がっていたことも拡大の一因とみられる。コロナ禍でマスク生活が長く続いた結果、子ども世代ではインフルエンザ自体をほとんど経験していない人も多い。
この冬の現実的な守り方
感染のスピードが速く、予測では過去10年で最大規模の流行になるおそれも指摘されるが、求められる対策は基本的に変わらない。手洗い、換気、人混みでのマスク着用といった習慣を、流行の波が落ち着くまで無理のない範囲で続けることが土台になる。
そのうえで、重症化を防ぐ切り札となるのがワクチンだ。今季のワクチンはサブクレードKに対しても一定の効果が期待できるとされ、高齢者や基礎疾患のある人、妊婦や乳幼児と同居する家族などは、早めの接種を検討しておきたい。
発熱やのどの痛みが出た場合は、無理をして登校・出勤するより、早めに医療機関に相談し、自宅で静養することが周囲を守る。特に子どもは高熱時に思わぬ行動をとることがあり、発症から数日は一人にせず、窓やベランダへの転落事故を防ぐ工夫も欠かせない。
一方で、長期のマスク生活や度重なる自粛で疲れを感じる人も少なくない。必要以上に恐れるのではなく、職場の在宅勤務制度や学校のオンライン授業なども活用しながら、家庭ごとの事情に合わせて「続けられる対策」を選び取ることが、この冬を乗り切る現実的な道筋になりそうだ。
