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到着する首脳の列がガラス越しに揺れ、記者のざわめきが波のように寄せては返す。2025年10月2日、コペンハーゲンのベラセンターで第7回の欧州政治共同体（EPC）首脳会合が開かれ、戦場の最前線から遠く離れたこの会場でも、人々の視線は空へ向いていた。無人機、対空防衛、そして欧州の結束。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も参加し、「次」を決める議論が静かに熱を帯びたと映る。
ベラセンターに集う視線、焦点は「空」
会場となったベラセンターは、欧州各国の首脳と国際機関の長が肩を並べる舞台になった。第7回となるEPCは加盟・非加盟を超えた対話の場で、政治・安全保障の課題を同じ地図上で捉え直す狙いがある。2025年10月2日、デンマーク政府の主催で首脳級が集まり、実務者の下準備を経た論点が一気に並んだ構図だ。
廊下を行き交う随行員の足取りは早い。焦点は、無人機が常態化した戦場の現実をどう欧州の防衛に写し取るかにある。発着場なき脅威は国境を選ばない。首脳らは領空の守り方を「点」から「網」へ変える必要性を共有し、従来の防空の延長では追いつかないという危機感をにじませたとみられる。
ゼレンスキー大統領は会合に合わせて各国首脳と接触を重ね、戦場で蓄積した対無人機の知見が域内防衛に応用可能だと訴えてきた経緯がある。今回も議題の中心はウクライナ支援と欧州の対空・対無人機能力の底上げで、個別の支援の延長線にある「共通の備え」へ軸足を移す機運が広がっている。
相次ぐ領空侵犯が浮かべた「新たな最前線」
前日2025年10月1日、EU首脳はコペンハーゲンで非公式会合を開き、デンマーク、ポーランド、エストニアなどでのロシアによる領空侵犯を念頭に防衛態勢の強化を協議した。2030年までの防衛即応体制の引き上げ、最大1500億ユーロ規模のSAFE活用など、資金と制度の両面で節目を刻む青写真が示されたといえる。
そこで言及されたのが「欧州ドローン・ウォール」や「イースタン・フランク・ウォッチ」といった旗艦構想だ。センサー、対無人機システム、情報共有を国境の継ぎ目なく束ね、飛来する小型無人機から巡航ミサイルまで多層で受け止める発想である。個々の装備を積み上げる発注から、統合運用へと舵を切る合図が響く。
無人機は安価で拡散が速い。抜け目のない「壁」を築けるかどうかは、偶然ではなく設備投資と相互運用性の設計にかかる。誰に有利なのか。域内産業の底上げか、対価に見合う抑止か。首脳らの議論は、欧州が「空の国境線」をどう描き直すかという、地図に残らない線引きの更新を迫っていると映る。
ウクライナの知見を欧州へ、協力はどこまで広がるか
ゼレンスキー大統領は過去のEPCでも、欧州全体の結束と防空の強化を繰り返し訴えてきた。地下鉄を教室に変えて子どもたちの学びを守る――そんな現実を背景に、欧州は戦場で磨かれた教訓を取り込まざるを得ない状況にある。今回の会合でも、経験の共有を前提にした共同訓練や調達の枠組みが俎上に載ったとみられる。
現時点で確認されている範囲では、EUはウクライナ支援の継続を明言し、防空、砲兵、無人機・対無人機、軍事機動性、サイバーの優先分野を再確認した。支援は総額で少なくとも1775億ユーロ規模に達し、制裁の第19弾の議論も進む。単発の支援から、欧州の安全保障アーキテクチャに組み込む段階へ移っている。
課題は明快だ。互換性の壁、産業基盤の容量、そして政治の意思。無人機の脅威は一国が強化しても隣国の脆弱性に引きずられる。だからこそ「壁」は装備の総量ではなく、つながりの密度で決まるはずだ。EPCという緩やかな輪から、実戦に耐える密な網へ。その移行を誰が主導し、どこまでやり切るのかが問われている。
