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熱気の残るネバダ砂漠で進むはずだった巨大太陽光計画「エスメラルダ7」が、連邦の許可ページで突如「キャンセル」と表示された。最大6.2ギガワット級の供給拡大に期待が集まる中、政権交代後の方針転換が影を落とし、与野党の間に動揺と警戒が広がっている。再構築の余地は残るが、道のりは長いとみられる。
計画の全体像と「キャンセル」の意味
砂に風紋が走るトノパ郊外で、無数のパネルが地平線まで並ぶ光景が期待されていた。連邦土地管理局は2024年7月25日、エスメラルダ7のドラフト環境影響評価書と計画変更案を公開し、最大6.2ギガワットの発電能力と蓄電の導入を示した。これは約160万世帯分に相当し、西部電力網の余力を押し上げる構想だったと映る。
計画は七つのユーティリティ規模の施設で構成され、広大な公有地に太陽光と蓄電池を段階的に配備する絵姿だった。連邦側はプログラム的環境影響評価（PEIS）で共通課題を先に整理し、その後に各案件の個別審査へと進む段取りを描いていた。送電や用地の最適化をまとめて評価する発想で、手続きの効率化が狙われていたのである。
しかし2025年10月10日、このPEISを軸にした進め方は頓挫したと報じられた。許可ページの表示は「キャンセル」に変わり、開発側と政府が個別案件として出し直すアプローチに切り替える合意に至ったという。計画そのものの可能性は残るが、手続きは初期段階へと巻き戻され、タイムラインは引き延ばされる構図が浮かぶ。
政治の揺れと開発の時間軸
一部報道によれば、新体制の下で風力・太陽光の大規模案件を長官レベルで個別精査し、立地当たりの「容量密度」を重視する姿勢がにじむ。巨大な一括開発よりも分散配置や規模の見直しを促すメッセージと受け取られ、砂漠の生態系や景観への配慮を求める声には響く一方で、建設の実行力には重しとなる。
この方針転換に対し、環境保護派の一部は歓迎するが、系統の逼迫と需要の急伸を前に、再生可能エネルギーの大型投資が揺らぐことへの懸念は業界や州政府に広がっている。エスメラルダ7は北米最大級と目されてきた象徴案件であり、停止の波紋は他の案件や送電強化計画にも及ぶとの見立てが強い。
今後は、各社が個別の事業計画を提出し、国環境政策法に基づく審査や権利設定を一つずつ積み上げる展開が現実的である。関係者の間では、評価や協議に数カ月から数年を要する覚悟が共有されつつある。電力需要の山が迫るなか、規模を保ったまま速度を取り戻せるのか、それとも分割と縮小で妥協するのか。分岐点は、砂漠の静けさとは対照的に熱を帯びている。
