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集計表の数字がひとつ先へ進んだ。2025年11月12日、調査会社ロー・モーション（Rho Motion）が10月の世界販売を公表し、電気自動車（EV）とプラグインハイブリッド車（PHV）の合計は190万台で前年比23％増となった。欧州は36％増の37万2786台、中国は約130万台へ拡大。一方で北米は41％減の10万0370台、その他地域は37％増の14万1368台。伸びと落ち込みが同時に走る、対照的な月だった。
10月の数字が示す北米の反動
北米の大幅減には、直前の駆け込みの反動が重なった。ロー・モーションのデータマネジャー、チャールズ・レスター氏は、米国のEV購入補助の失効前に8月と9月が記録的な販売となり、その勢いが途切れたと説明する。価格面の逆風も残り、電動化の勢いに急ブレーキがかかった構図だ。
補助制度の期限や適用条件は、需要の山谷を短期間でつくる。駆け込みが在庫の前倒し消化を促し、翌月の商談を薄くするのは自動車市場で繰り返されてきた動きである。今回も例外ではなく、需要の先食いと価格差の大きさが、10月の減速を強めたと受け止められる。
もうひとつの論点は価格だ。レスター氏は、電動車とエンジン車の価格差が北米では依然大きいと指摘する。家計の金利負担が続く局面では、この差は購買決定に効く。主要メーカーの月次販売がそろって鈍った背景に、値頃感の不足があったとの見方は自然である。
欧州と中国、価格差が支えた伸び
対照的に、欧州は足取りがそろい、2桁の伸びを確保した。特定の大型市場が牽引し、政策の後押しやサプライチェーン整備も効いた。負担と便益のバランスが見通せるとき、フリート更新を含む企業需要は動きやすい。数字は、その安定感を物語っている。
中国の強さは価格にある。電動車とエンジン車の価格差が相対的に小さいと指摘されるように、購入時のハードルが低い。補助に頼らずとも選べる価格帯が広がれば、モデルチェンジや在庫調整の波があっても基礎需要は崩れにくい。10月の伸びは、その地力の表れだ。
さらに年末の需給には制度の節目が映る。中国では新エネルギー車の購入税（車両購入税）は、2024〜2025年は全額免税、2026〜2027年は半額に移行する枠組みだ（免税上限額の設定あり）。現行の全額適用が続く間に購入を前倒しする動きが、年末商戦の底上げに寄与するとみられる。
年末とその先、企業が読むべきサイン
今回の統計は、価格差と政策タイミングが需要を大きく左右することをあらためて示した。欧州は年末にかけて堅調が続くとの見方が出ており、中国も制度移行前の買い支えが期待される。販売現場に与える示唆は、値付けと在庫、販路の微調整を素早く回す体制づくりに尽きる。
一方で北米は、制度の変更と金利環境のはざまで需要が揺れやすい。高価格帯の電動車だけで構成比を押し上げるのは難しく、価格帯の刷新や販促の再設計が問われる。短期の振れに引きずられず、来期のモデル投入と金融条件の整理を同時に進める姿勢が要る。
地域ごとに事情は異なるが、共通する鍵は「手の届く価格」と「先が読める制度」だ。今回の数字は、その2点がそろった市場から安定して伸びることを示した。年末の繁忙に向けて、現場の小さな調整が、積み上がった需要を確実に刈り取るはずだ。
