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タブレット端末に触れた指先に合わせて、遠く離れた無人機が静かに進路を変える。そんな場面が2025年10月21日、米ネバダ州のネバダ試験訓練場で実現した。F-22戦闘機のコックピットから無人航空機MQ-20を直接操作するという前例の少ない飛行試験で、人間とAIが組んだ新しい空の戦い方が、一歩現実に近づいたのである。
F-22とMQ-20、人とAIが同じ編隊に
この試験はロッキード・マーチンとジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズが共同で実施し、結果は2025年11月19日に公表された。ネリス空軍基地を拠点とするF-22「ラプター」と同社のステルス無人機MQ-20「アベンジャー」がペアを組み、前者のパイロットが後者の行動をコックピットから指揮した。両機はL3ハリス製の戦術データリンクBANSHEEとソフトウェア無線Panteraで結ばれ、機体間で任務データをやり取りしたとされる。
操縦者の手元には、ロッキード・マーチンの先進開発部門スカンクワークス（伝説的な偵察機SR-71を生み出した組織）が開発した、パイロット・ビークル・インターフェースと呼ばれるタブレット型端末が置かれた。パイロットは画面上のシンプルな操作で偵察や攻撃のパターンを選び、MQ-20に実行を任せる。細かな進路変更やセンサー運用は無人機側の自律機能が担い、単座戦闘機の負担を増やさずに「僚機」を増やす狙いがある。企業側は、人と機械が自然に役割分担する将来の空中戦の一里塚だと強調する。
システム群構想と協調戦闘機が描く空
今回の成果は、アメリカ空軍が進めるシステム群構想の文脈の中で位置づけられている。これは戦闘機や無人機、地上指揮所、衛星などをネットワークで結び、1つの巨大なセンサー兼射撃システムとして動かそうとする考え方である。全軍のセンサーと指揮系統を統合するJADC2（全ドメイン統合指揮統制）と呼ばれる構想とも重なり、空だけでなく陸海宇宙の情報も同じ網で扱うことを目指す。同じネリス空軍基地では指揮所演習で人間と機械の協働を試す実験も行われており、空軍全体で同じ方向を向いた取り組みが進んでいる。
無人僚機を活用できれば、高価な戦闘機を敵の防空網から離れた位置に置いたまま、リスクの高い偵察や先制攻撃を担わせる発想が現実味を帯びる。一方で、データリンクの防護やAIに任せる判断の範囲、パイロットが最終責任を負う線引きなど、解決すべき課題も多い。ロッキード・マーチンと空軍は今回の試験を皮切りに追加の飛行評価を続ける計画だという。砂漠の上空で静かに始まったこの協働は、将来当たり前になる空の風景を少しずつ形づくりつつある。
