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ベトナムから持ち込んだコメを国産と偽って売った疑いで、大阪府警が12月1日、東大阪市の食品販売会社を営むベトナム国籍の女と日本人の夫を詐欺などの容疑で追送検した。2〜9月にかけて全国の小売業者に約300トンを流通させ、売り上げは約1億3000万円に上ったとみられている。国産米の高値が続く中で起きた今回の事件は、「産地表示」をどこまで信じてよいのかという不安を、静かに広げている。
「国産」の札に寄りかかる店と客のリスク
府警によると、2人はベトナムにいる協力者と連携し、不正に持ち込んだコメを国産と説明して複数の小売店に販売していたとされる。取引先には愛知や兵庫など複数県の店舗が含まれ、結果としておよそ30都府県で商品が店頭に並んだ可能性がある。米袋の表示や仕入れ先の説明を頼りに仕入れる小規模店にとって、産地偽装は自らの信用も揺るがす行為だが、産地を科学的に検査する体制を常に整えるのは難しい。
消費者側から見れば、店頭に並ぶ「国産」の札は、価格上昇の中でも味や安全性に対する最後の拠り所になっている。今回のコメに健康被害は報告されていないものの、表示が事実と異なれば、日々の買い物で疑いの目を向けざるを得なくなる。値上げに対応して安い店を探してきた人ほど、偽装のリスクにさらされやすい構図もある。身近な食材で起きた事件だからこそ、産地や流通経路の透明性をどう確保するのかという課題が、暮らしの問題として浮かび上がる。
一方で、輸入米を扱う事業者の中には、正規の関税を払い産地も明示したうえで販売し、値上がりした国産米の代替として一定の支持を得ているケースもある。まじめな事業者と違法行為をする事業者が同じ価格競争の土俵に立たされれば、後者の安売りに押されて健全なビジネスが成り立ちにくくなる。表示違反は消費者を裏切るだけでなく、真っ当に輸入に取り組む事業者にも打撃を与える点で、現場の不満は根強い。
高値相場と輸入拡大が生んだ「もうけの計算」
取り調べに対し、女は「日本でコメの価格が上がっており、ベトナムで安く仕入れて売れば利益になると考えた」との趣旨の説明をしていると各社は伝えている。ここ数年、国内のコメ価格は天候不順や生産量の調整などが重なり高止まり傾向にあり、輸入米との価格差は広がっていた。テレビ局の経済報道では、ベトナム産のジャポニカ米を正規に輸入しても、国産より割安な水準で販売できる事例が紹介されている。こうした環境が、「国産」と偽ればさらに高く売れるという短絡的な計算を後押しした可能性がある。
今回の女の会社は、もともと食品輸出入を手がけていたとされるが、今年10月にはコメを「緑豆」と偽って申告し、大量に密輸しようとしたとして関税法違反などの罪で起訴されている。正規輸入と違法な密輸とを使い分けながら、在庫を国内に持ち込み、国産表示で売り抜ける――そんなビジネスモデルだった像が浮かぶ。国境をまたぐ取引では、書類上の品名や産地が監視の弱点となりやすく、確認作業の手間を省こうとする心理につけ込まれれば、不正が繰り返されかねない。
背景には、ベトナムをはじめとするアジア産米の輸出拡大もある。日本国内では、業務用や家庭向けに輸入米を扱うスーパーや飲食店が増え、価格を抑えたい需要に応えている。輸入が増えれば、その一部が不正なルートに流れ込む余地も広がる。価格高騰で生じた隙間に、密輸と表示偽装を組み合わせたビジネスが入り込んだ構図は、他の農産物にも当てはまりうるだけに、単なる一事例として片づけにくい。
輸入米時代の「見える化」をどう進めるか
日本には米トレーサビリティー法など、流通段階で産地を記録し表示する仕組みがある。それでも今回のような事件が起きたのは、帳簿上の記録が偽装されれば、末端の小売店や消費者からは見抜きにくいからだ。DNA鑑定など科学的な確認はコストが高く、全てのロットに適用する現実性はない。だからこそ、輸入時点での審査の厳格化や、卸売段階での抜き打ち検査、デジタル技術を活用した流通情報の共有など、上流側での「見える化」をどこまで進められるかが問われている。
同時に、小売側にも仕入れ先を分散させるなどの自己防衛策が求められる。特定の業者から相場とかけ離れた安値で大量に持ち込まれる場合には、書類だけでなく取引の背景も確認する視点が必要だろう。消費者としては、価格が極端に安い商品について一度立ち止まり、産地や販売元の情報に目を向けることが、結果として市場全体の健全化につながる。安いコメを求める声と、産地表示の信頼を守るコストのどこに折り合いをつけるのか――今回の事件は、その負担を誰がどう分け合うのかという、これからの議論を静かに促している。
