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冷たい雨が上がった首都ワシントンで、規制の針が一段と進んだ。米連邦通信委員会(FCC)は2025年10月29日、国家安全保障上の脅威と位置づけた企業の部品を組み込む機器への新規認可を止め、必要に応じて過去に認可した機器の販売も止められる新ルールを採択した。投票は3対0の全会一致。通信から身の回りの電波機器まで、米市場の「抜け穴」を塞ぐ動きが鮮明になったと映る。
FCCが塞いだ“抜け穴”
今回の決定は、いわゆる「カバーリスト」に載る企業の部品を含む機器に照準を合わせたものだ。FCCは、これら企業の部品が使われる機器について新たな機器認可を認めない方針を明確化し、さらに特定のケースでは、すでに認可済みの機器についても販売禁止など後ろ向きの措置をとれる権限を整えた。全会一致という票読みが示すのは、脆弱性の温床を放置しないという規制側の強い合意である。
新ルールは一律の回収や使用停止を狙うものではない。消費者の手元にある既存機器の使用継続は原則容認しつつ、個別製品ごとに「公益性」や国家安全保障リスクを重みづけして審査する枠組みが導入された。措置の前には最低30日の意見募集期間を設ける手順も盛り込まれ、対象の特定と社会的影響の見極めを両立させる設計といえる。
ブレンダン・カー委員は、悪意ある主体が規制の隙を突く現実を指摘し、迂回ルートで米市場に入り込む機器を封じる必要性を強調したと報じられている。制度としては、部品や設計・製造への関与まで遡って同一性を評価するため、名義を変えた“迂回輸入”にも目配せが利く。小さな無線モジュール1つが、規制線を決める境界になる光景が浮かぶ。
狙いと背景、カバーリストの現在地
FCCのカバーリストは、安全保障上のリスクが認定された通信機器・サービスを列挙する制度で、これに掲載された企業の新規機器は認可されない。これまでにHuawei、ZTE、Hikvision、China Mobile、China Telecomなどが名を連ね、通信網の中核から監視カメラまで幅広い製品が対象に含まれてきた。2022年以降、FCCは新規承認の停止を段階的に強化してきた経緯がある。
ただ、部品レベルの関与やOEM供給、ブランド変更などを通じ、規制の網をすり抜ける余地は残っていた。FCCは10月初旬の段階で、部品の採用有無に基づく承認阻止や、過去承認品の是正に踏み込む案を示していた。29日の採決は、その方針を正式なルールに格上げした格好であり、サプライチェーンの全体を俯瞰する“面”での管理へ転換したといえる。
リストの実効性を担保するもう1つの柱が、試験・認証の抜本対応である。FCCは今年、特定の国外試験所の扱いを再検討する動きを強め、認証の入口からリスクを抑え込む姿勢を示してきた。制度の外縁を固めることで、販売現場だけでなく、設計・製造・認証の川上から「危ない機器」を市場に出さない圧力が強まっているとみられる。
何が変わり、誰に響くのか
短期的には、無線機能を持つ通信機器や監視カメラの一部で、米国内の新規投入やモデル更新の計画見直しが広がる可能性がある。部品の供給網まで遡及する審査が入るため、表向きは別ブランドでも、設計・製造にリスト掲載企業が関与すれば認可の壁は高くなる。輸入業者や小売プラットフォームは、販売者の開示情報と実際の部品構成の整合確認を迫られる局面が増えるだろう。
一方で、消費者の手元にある既存製品の使用を直ちに禁じるものではない点は重要である。ケースごとの審査と意見募集を経て、リスクが具体化した製品から順に是正される運用が想定される。米メディアは、ドローンなど民生の電波機器にも影響が及ぶ可能性を指摘しており、対象の線引きや優先順位づけを巡って、企業・利用者・規制当局の三者協議が続くとみられる。
規制強化は米中の技術覇権競争の一断面でもある。部品を跨ぐ包括的な監視は、セキュリティ水準の底上げにつながる半面、供給網の再構築コストや製品投入の遅延を招き得る。今回のルールは、公益性の観点から最終判断を下す構造を採ることで、過度な市場混乱を抑えつつ、実害の可能性が高い案件に的を絞る狙いが透ける。次にどの機器が俎上に載るのか、30日の意見募集を軸に可視化が進むはずだ。
