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政府が、外国人名義の不動産を全国で一体的に把握するための新たなデータベースづくりを進めている。27年度の運用開始を視野に、国籍の届け出欄がないマンション登記には、新たに国籍登録の仕組みも設ける方針だ。不動産取得の実態を可視化したうえで、外国人による土地取得をどう管理し、誰をどこまで守るのかという難しい問いに向き合おうとしている。
見えない所有者への不安、地方からの視線
地方の役所では、山あいの別荘地や水源近くの山林が、いつの間にか海外の法人名義に変わっていたという相談が少しずつ増えている。登記簿には所有者の氏名や住所は載っても国籍は分からず、「誰が何の目的で持っている土地なのか」が見えないことが、防災や水資源保全への不安をくすぶらせている。
国土交通省はすでに、山林なら1万平方メートル超の取引など大規模な土地購入について、取得者の国籍を自治体に届け出る制度を導入している。自治体が集めた情報は26年度に整備される国のシステムで管理されるが、対象は広い土地に限られ、都市部のマンションの一室など小口の不動産や過去の取引までは追い切れない。
今回のデータベース構想と国籍登録の拡大は、「見えない所有者」を減らし、自治体が災害対策や土地利用計画を立てやすくすることを狙う。所有者の国籍と土地の用途を落ち着いて確認できれば不安を抑える助けにもなるが、外国人住民や投資家には、国籍情報がどこまで共有されるのかという懸念も生まれている。外国人土地所有の可視化を通じて誰をどう守るのか、その線引きが現場では早くも問われている。
国籍登録とデータベース化、その先に見据えるもの
ライブドアニュースなどによれば、高市首相は11月4日、外国人による土地取得のあり方や実態把握について検討するよう関係閣僚に指示した。これを受け政府は、登記情報や各省庁のデータを連携させて外国人名義の不動産を横断的に確認できる仕組みを27年度にも動かし、数字を踏まえて規制の要否を検討する段取りを描いている。
カギとなるのがマンション登記への国籍登録だ。現在の不動産登記は所有者の氏名や住所、持ち分などは記録する一方で国籍の届け出は求めてこなかったが、新制度では外国籍の個人や法人が区分所有権を取得する際に国籍情報も登録し、データベース側で国籍や地域ごとの取得状況を分析できるようにする。これにより、特定の地域や用途に偏った取得がないかを客観的に示しやすくなるとみられる。
もっとも、データベースの整備自体は直ちに新たな規制強化を意味するものではない。政府がまず強調しているのは、国籍や所有形態ごとの実態を踏まえて議論するという「土台づくり」であり、どのエリアにどの程度リスクがあるのかを精査したうえで手当てを考えるという姿勢だ。外国資本が地域の雇用や税収を支えてきた側面も踏まえつつ、投資の自由と安全保障・生活インフラ保全との折り合いをどう付けるかが焦点になる。
規制か共生か、外国資本との向き合い方
外国人による土地取得をめぐっては、住宅価格高騰を背景にカナダやニュージーランドが一部の住宅購入を制限するなど、各国で対応が分かれている。日本では特定の地域を除けば外国人も日本人と同様に土地を取得できる状態が続いてきたが、安全保障上重要な施設の周辺や水源地などへの投資にはかねてから神経がとがってきた。今回のデータ整備は、全面禁止ではなく、場所や用途を絞った議論に踏み込む準備段階ともいえる。
一方で、外国資本は観光地のホテル再生や老朽化したビルの建て替えなど、地域経済を支えてきた側面もある。過度な規制が投資全体を冷え込ませれば、人口減少に悩む地方では打撃になりかねない。国籍情報を含むデータベースを使って、どのような投資が地域に利益をもたらし、どのようなケースに追加の監視や規制が必要なのかを見極め、透明性と偏見のない線引きの両立を図れるかが問われる。
外国人土地所有の可視化は、単なる統計整備にとどまらない。誰の安全と暮らしを守るために、どのような情報を集め、どこまで共有するのか。政府と社会がその線引きを丁寧に探ることが、今後の制度設計の成否を左右しそうだ。
