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国会内の会議室に静かな熱気が漂った。自民、公明、日本維新の会の実務者が向き合い、高校授業料無償化の具体像を詰めた。合意の起点は2026年度。私立の実質無償化に向け、上限額を全国平均に合わせる。受験の願書配布が近づくなか、子どもと保護者が進路を選ぶための“見通し”がようやく形になったと映る。
入試を見据えた合意の輪郭
2025年10月29日、与党2党と日本維新の会が国会内で実務者協議を重ね、2026年度から高校授業料を無償化する方針で一致したとされる。現時点で確認されている範囲では、制度の柱は国の就学支援金を通じた負担軽減で、所得制限の撤廃と私立への上乗せ拡充が軸になる。入試直前の不確実性を減らし、志望校選びの背中を押す狙いがにじむ。
合意の背景には、3党が年初から積み上げてきた大枠がある。私立高校の授業料に充てる上限は現行の年39万6000円から45万7000円へ。さらに2025年度には先行措置として、公立授業料相当の11万8800円を全世帯に支給する段取りが確認されてきた。無償化と並行し、教材・学用品を支える奨学給付金を中間所得層へ広げる方針も合意に織り込まれている。
受験生の時間軸は速い。願書配布から出願、試験へと一気に進む。公明党は9月時点で「早めに合意を」と促しており、現場の混乱を避けたいという与野の思いは重なる。制度の輪郭が示されたことで、家庭の計画や学校側の説明にも具体性が宿るとみられる。
何が変わり、どこまで広がるか
最大の変化は「所得にかかわらず」授業料の実質無償を目指す点である。私立加算の上限45万7000円は、私立授業料の全国平均水準に合わせた数字だ。先行措置の11万8800円は2025年度の1年限りの執行で、公私を問わず全世帯に行き渡ると整理されている。これにより、公立は実質的に無償、私立も広い世帯で負担軽減が進む構図が浮かぶ。
一方で、無償化の恩恵が高所得層に偏らないよう、授業料以外の支援を拡充するのがもう一つの要だ。高校生等奨学給付金を低所得から中間層へ広げることで、教材費や学用品費の実負担を下げる。私立の引き上げが公立離れを生まないかという懸念にも配慮し、専門高校を含む公立の学びの環境整備を進める方針も示されてきた。
私立通信制の扱いなど金額の細部は、今後の制度設計で詰めの議論が続く。33万7000円案が俎上に載っているとの報もあるが、現時点で確認されている範囲では最終決定には至っていない。制度は数字だけでなく、単位制や登校形態の違いにどう向き合うかが問われる。
線引きの是非と現場への周知
対象の線引きも論点だ。外国籍の生徒について、永住が見込めない留学生らを対象外とする方針が一部報道で示された。外国人学校は制度対象外としつつ、別枠の予算措置で現在の支援水準を維持する方向と伝えられている。教育の機会均等と制度の整合性、その両立をどう図るかが焦点になる。
政治の言葉は現場で初めて“制度”になる。合意の重みを支えるのは、学校が保護者に正確に説明し、自治体が申請や給付の事務を滞りなく回すことだ。制度開始は2026年度。スケジュールがタイトであるほど、周知の遅れは進路選択や家計の見通しに跳ね返る。受験と入学のサイクルに合わせた情報提供が欠かせない。
財源や制度の詳細は、今後の政府方針や関連予算で固められる。3党合意はスタートラインにすぎない。数字の公平さに加え、地域や学校種ごとの実態に合う柔軟さをどう担保するか。制度の趣旨である「経済的事情による教育格差の是正」を現実の教室に落とし込めるかどうかが問われている。
