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福岡県警が、県内で盗まれたトラックをウガンダに不正輸出しようとしたとして、ウガンダ人の男5人を窃盗と関税法違反の疑いで逮捕していたことがわかった。車台番号を偽って通関を試みたとされ、2024年秋以降に県内で相次いだ同種被害（約10件、被害総額約1000万円）との関連が焦点となっている。捜査は余罪の有無と資金や販路の流れに踏み込む段階に入ったとみられる。
偽の車台番号で通関を試みたと捜査関係者
静かな港の朝、施錠されたコンテナの列の向こうで、ひとつの番号が捜査の糸口になった。捜査関係者によると、5人は盗難トラックを海外へ送る段取りを進める中で、通関の要となる車台番号を差し替え、虚偽の内容で税関に申告した疑いがある。番号を変えれば履歴は断たれる――そんな計算が透けるが、書類と実物の齟齬は小さくない綻びを生むと映る。
関係者の説明では、2025年7月ごろ、県内でトラックが盗まれた直後に輸出の準備が進められ、県内の港からウガンダ向けとして手続きが試みられた。県警は輸出申告書類に記された特徴と、盗難届に記された車両の傷や装備の一致を積み上げ、通関段階での介入に踏み切った。物証の突合が進み、男らの行動記録も丹念に洗い直されたとみられる。
5人には過去にもトラックの輸出歴があり、現地での売却や流通経路に関与した可能性があるとして、県警は資金移動の痕跡や貨物保管場所の出入りを精査している。逮捕時期や供述の細部は明らかでないが、共犯関係や役割分担、番号改ざんの具体手口の解明が次の焦点である。現時点で確認されている範囲では、通関をすり抜けるための番号偽装が核にあったとみられる。
県内で続いたトラック窃盗、被害は約1000万円
2024年秋以降、福岡県内ではトラックを狙った窃盗が約10件確認され、被害総額は約1000万円に達している。静かな工場地帯や資材置き場、休業日の運送拠点など、目立たない時間帯が狙われたとみられる。積荷よりも車両そのものの機動性と換金性に照準を合わせた犯行の輪郭が浮かぶ。今回の逮捕は、この連続的な被害の流れを断ち切る端緒になり得る。
県警は被害届の初動から、車載機器のログや周辺カメラを網羅し、輸出書類の照合に踏み込み、盗難と輸出未遂を一体の犯罪として捉えた。捜査の節目では、通関手続きで求められる車台番号や車両情報の整合性が詰められ、書類の「正しさ」と現物の「違和感」をすくい上げる作業が続いたとみられる。海と陸をつなぐ接点に、犯行の痕跡は濃く残る。
現時点で確認されている範囲では、男らは県内で車両を確保した後、短期間で改ざんと積み込み、通関へと走らせた可能性が高い。物流現場では鍵管理や保管の強化、夜間巡回の増員などが広がっているが、窃盗と不正輸出が組み合わされると発見の難易度は跳ね上がる。被害の連鎖を断つには、通関段階での検査と現場の防犯対策を重ねるほかないと映る。
広がる国外流出の網、同様事例の摘発も
国内では、虚偽申告による盗難車の不正輸出未遂が各地で摘発されてきた。2025年には、横浜税関が高級SUVなど2台をUAE向けに出そうとした事案で関税法違反として告発に踏み切っている。コンテナに積み替え、部品名義で偽装するなど、輸出時の手口は巧妙化する一方だ。税関検査と警察捜査の連携が、見えにくい流れを掬い上げる要になる。
警察の摘発でも、虚偽の輸出申告で盗難車を海外へ送り出そうとした容疑で逮捕に至る例がある。輸送網の国際化に乗って中古車は短時間で国境を越え、分解や名義変更を経て実態を追いにくくなる。番号や書類の小さな矛盾をどう詰め切るかが攻防の核であり、今回の福岡の事件でも、書面と現物の突合が一連の構図を引き出したとみられる。
一方で、本件はアフリカ東部のウガンダが仕向地として浮上した点が特徴的である。右肩上がりの中古商用車需要や為替の影響が背景にある可能性は否定できないが、まずは盗難から輸出までの国内ルートの全容解明が先決だ。県警は売却先や送金経路の裏付けを急いでおり、被害が続いた2024年秋以降の一連の事件群との接点がどこまで立証されるかが見えてくる。
