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負傷者を乗せた救急車が、夜のガザ市内をサイレンを鳴らして走った。19日、イスラエル軍がガザ地区で4回の空爆を行い、地元保健当局によれば少なくとも25人が死亡した。10月に発効した停戦合意のもろさが、再び露わになっている。標的はハマスの戦闘員だとされるが、犠牲者の多くは民間人とみられ、緊張は一気に高まった。
ガザ各地で相次いだ空爆と広がる被害
地元保健当局によると、今回の空爆はガザ市内と南部をほぼ同時に襲った。ガザ市のザイトゥーン地区では住宅密集地に爆弾が落とされ、少なくとも10人が死亡したとされる。市郊外シェジャイア地区でも2人が命を落とし、残る犠牲者は南部ハンユニスでの2回の攻撃で出たという。現場周辺では建物の倒壊や火災も報告され、住民の避難が夜通し続いた。
医療関係者は、がれきの中から負傷者を運び出す作業が続いていると伝えている。既に戦闘で疲弊した病院には次々と救急車が到着し、集中治療室や手術室の逼迫が常態化しているという。長期の戦闘と封鎖で医薬品や燃料が不足する中、新たな空爆は市民の命綱となる医療体制の限界をさらに押し広げている。負傷者の中には子どもも多く含まれるとみられ、家族は病院の廊下で名簿を確かめながら安否を探し続けている。
停戦合意の狭間でぶつかる説明と非難
今回の空爆が起きたのは、10月に発効した停戦合意の下である。この合意は米国の仲介で結ばれ、約2年に及んだ戦闘をいったん止めることを目的としていた。イスラエル側は拘束されていた人質の解放を、ハマス側は収監中のパレスチナ人の釈放や人道支援の拡大を、それぞれ見返りとして受け取る枠組みだ。将来的にはハマスの非武装化やガザ統治の在り方も協議する段階的な計画とされるが、具体像はなお見えない。
イスラエル軍は、今回の攻撃は停戦に違反して自軍部隊へ発砲したハマス戦闘員を標的にしたものだと主張し、兵士に負傷者はいなかったと説明している。一方ハマスは、イスラエルの空爆を「危険なエスカレーション」だと非難し、停戦の履行と攻撃停止をイスラエルに迫るよう米国へ働きかけを求めた。停戦発効後もガザでは断続的に銃撃や空爆が起きており、パレスチナ側の集計ではすでにおよそ100人が死亡したとされるなど、合意の名の下での暴力が続いている。
出口なき停戦管理と市民の暮らし
こうした応酬は、今回に限られたものではない。停戦合意後、イスラエルはハマスの挑発に対する自衛措置だと説明しながら複数回の空爆を実施し、パレスチナ側は少なくとも数十人が戦闘再開後に死亡したと主張している。しかし、ハマスの武装解除やガザの恒久的な統治体制といった根本的な争点は棚上げされたままで、停戦は本質的な解決ではなく「小休止」として機能しているだけだとの指摘もある。米政府高官は匿名を条件に、ハマスが停戦を壊そうとしているとの見方も示した。国際社会の仲介が続くなかでも、その溝は埋まっていない。
ガザでは、停戦後も生活の改善はほとんど実感できないと言われる。合意で想定された大規模な支援トラックの流入は、イスラエル側の制限により半分程度にとどまる日もあり、食料や燃料の不足は解消されていない。破壊された住居に戻れない人々は仮設のテントで夜を過ごし、次の空爆の知らせにおびえながら、形だけの停戦の行方を見つめている。
