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止まっていた荷が再び動き始めた。ドイツの大手自動車部品メーカーのトップが、今週初めに中国当局からライセンスを取得し、ネクスペリア製半導体とそれを組み込んだ部品の輸出を再開したと語った。中国側が7日に禁止措置の解除に言及したとの説明も伝わる。分断の象徴となっていた対立に、供給の現場から緩みが差し込んだ形だ。
供給再開の一報と現場の動き
工場の出荷口で、止め置かれていた梱包箱の積み込みが淡々と進む。メーカーの最高経営責任者は、取得した輸出ライセンスに基づき、ネクスペリア製の品目とそれを組み込んだ完成部品の出荷を順次立ち上げたと説明した。輸送手配や通関の段取りが部分的に再稼働し、倉庫に積まれた在庫の山がようやく動き出したという。
同社はこれらの半導体を中国からハンガリーへ送り、そこから欧州各地の工場に配分する体制をとってきた。停止局面では、代替品の認証や設計変更に踏み切れないまま、センサーやブレーキ制御、運転支援などの基幹モジュールに影響が波及していた。今回の再開は、その「詰まり」を解す最初のバルブに見える。
一方で、手続きと業務過程はすぐには元通りにならないという。トップは、現場の調達や生産計画の再調整に時間がかかり、当面4〜6週間は混乱が残る可能性に触れた。需要側では後ろ倒しになった発注の積み上がりがあり、供給側では優先順位の付け替えや検査枠の確保が必要だ。再開の号砲は鳴ったが、走路の凸凹は少なくない。
緊張緩和の兆しと残る不確実性
対立の発火点は、オランダ政府が2025年9月30日にネクスペリアを巡って国内法を発動し、経営判断に広範な制限を課したことにある。欧州の供給確保を名目とした異例の措置で、会社の通常生産は継続できるとしながらも、資産や人事の大きな変更には政府が介入できる枠組みが設けられた。この決定は10月に公にされ、企業側と当局の綱引きが続いてきた。
中国側はこれに反発しつつも、11月1日に「適格な輸出に対する免除」を認める方針を示し、ネクスペリアの中国拠点からの供給再開を後押しする姿勢に言及した。7日に「製品全般の禁止解除」を明らかにしたとの説明はあるが、現時点で確認できる公式発表は免除運用の枠組みに関するものだ。個別ライセンスに基づく再開と、包括的な解除との間には差が残る。
供給網の手触りは、各社の工場に最も早く現れる。今回ライセンスを得た部品メーカーは、中国に十数拠点を持ち、欧州の完成車大手に幅広く納める。ラインを止めないための部材の山積みと、在庫の偏在是正は並行して進むはずだ。だが、オランダ側の措置がなお継続し、中国側の枠組みも免除ベースで運用される以上、調達の平常化には制度面の歩み寄りが欠かせない。
長い競り合いの末に見えた小さな橋は、まだ仮設の足場に立つ。港で積み込まれるパレットが行き先ごとに分かれていく様子は、現場の工夫と不安定さの両方を映す。荷は動き出した。その流れが川幅を取り戻せるかどうかは、政治と制度の調律がどれだけ早く、静かに効いていくかにかかっている。
