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パレスチナ自治区ガザに向けて支援物資を運ぼうとした「グローバル・スムード船団」の活動家がイスラエルで拘束され、2025年10月6日、グレタ・トゥンベリさんらがギリシャに到着した。到着ロビーに響いた歓声は、海上の封鎖と政治の駆け引きが地上へ持ち込まれた現実を映す。拘束と送還の過程、各国の対応、残された人々の行方を追った。
アテネでの出迎えが映したもの
アテネ国際空港の到着口に、巨大なパレスチナ旗が広がった。人波は「パレスチナに自由を」と唱和し、黒いキャップ姿のトゥンベリさんを囲んだ。2025年10月6日、ギリシャ外務省によれば161人が手配便で到着し、その中に自国民27人が含まれた。イスラエルは同日171人を送還し、拘束者479人のうち累計341人が帰還に向かったと映る。
到着ロビーでトゥンベリさんは「このミッションが存在しなければならないこと自体が恥だ」と声を荒らげ、ガザで続く攻撃を「虐殺」と表現した。彼女は「政府が法的義務を果たさないから私たちが一歩踏み出した」とも述べ、国際社会の不作為を強く批判した。言葉は、疲労の影を帯びつつも揺らぎがなかった。
船団は多数の小型船と支援物資を伴い、海上封鎖の突破と人道危機の可視化を狙った。現場の活動家は、輸送自体よりも「世界の目をガザに向け続けること」が狙いだったと語る。到着の歓声の裏で、彼らの視線はなお沖合いに残る仲間とガザの浜辺へ伸びているとみられる。
拘束と送還、その間にあった主張
拘束から送還までの過程は依然として不透明な点が残る。ギリシャ政府は自国民の保護に向けた働きかけを続け、2025年10月6日には161人の到着を確認したと発表した。内訳には自国民27人が含まれ、面会や支援の調整が並行して進んだとみられる。空港ロビーの熱気は、その裏で続いた領事支援の緊張も伝えていた。
一方、各国の活動家は帰還後、拘束中の待遇を告発した。睡眠や飲食の制限、暴力や侮辱、ケージに入れられたといった証言が並び、ベッドバグ被害を訴える声も出たという。イスラエル外務省は「完全な虚偽」と反論し、食事や水、弁護人へのアクセスなどの権利は守られたと強調した。主張は正面からぶつかっている。
現時点で確認されている範囲では、イスラエル国内の収容施設にはなお約150人が残留し、うち数十人がハンガーストライキに入ったと伝えられる。ネルソン・マンデラ氏の孫マンドラ・マンデラ氏も含まれるとの情報もある。各国との調整が進み、7日以降も順次送還が続く見通しである。残る人々の表情には、緊張と覚悟が交錯していた。
海の封鎖と世界の視線
船団の名は「グローバル・スムード（Sumud）」だ。アラビア語で「揺るがぬ忍耐」を響かせる言葉が掲げられた。活動家は海上封鎖を「違法で非人道的」と位置づけ、打破を宣言した。他方、イスラエル側は船団をハマスに利する宣伝行為とみなし、虐殺や飢餓の指摘を退けている。評価は真っ向から割れている。
それでも、誰に有利なのかという問いは簡単には解けない。各国政府は自国民の保護に動きつつ、イスラエルとの関係や域内の治安に目配せする。トゥンベリさんは「政府は義務を果たしていない」と批判したが、国家は現実の線引きを迫られる。海の上の応酬は、外交の距離感を露わにしたと映る。
空港の熱気は安堵と連帯の合図である一方、ガザの飢えと破壊は続く。送還機のタラップを降りた人々の手には、掲げられた旗と未完の任務が残った。事実関係はなお動いており、残る被拘束者の処遇、支援物資の行方、次の試みがいつどこで生まれるかが焦点に浮かぶ。
