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箱わなが持ち上げられ、市職員や猟友会と並ぶ迷彩服がゆっくり動き出した。秋田県の緊急要望を受け、防衛省は2025年11月5日、クマ対策支援のため陸上自衛隊を派遣した。人身被害の拡大で現場の手が足りない中、輸送などの後方支援に踏み出した意義は小さくない。
合意と初動の流れ
同日午前、県と防衛省のあいだで活動内容の協定が結ばれ、役割分担が確認された。初動は鹿角市。秋田駐屯地の第21普通科連隊が市職員や猟友会と組み、捕獲用の箱わなを現地へ運ぶ作業に臨んだ。移動距離はおよそ10kmで、約15人が息を合わせて地形に合わせながら慎重に進めた。
今回の派遣は自衛隊法100条に基づく輸送事業として位置づけられる。防衛省は、駆除そのものは担わず、輸送や設置、見回りを支える後方支援に徹する方針を示している。無制限の投入は避け、自治体の準備状況に合わせて、県が示す地域から順次活動を進める考えだ。
役割と装備、安全への配慮
協定は、箱わなの設置・運搬に加え、見回りにあたる猟友会員らの輸送、駆除個体の運搬や埋設のための掘削、ドローンによる情報収集を定める。火器を携行しての駆除は行わない。現場の知見は猟友会が中心となり、自衛隊は人員や車両、機動力で作業を支える。
隊員は防弾チョッキを装着し、撃退用スプレーや防護盾、長尺の木銃を携行する。熊との距離を取り、安全圏を保ちながら作業を進めるための装備だ。隊形や連携は地元の助言を踏まえて調整し、危険の兆しがあれば即時に退避する手順を共有している。
広がる被害と行政の判断
県によれば、今年度の人的被害は60人に達し、そのうち4人が亡くなっている。目撃情報は累計で1万件を超え、通学路や住宅地の近くでも出没が相次ぐ。従来の対応だけでは追いつかない局面に入り、住民の移動や農林業の作業計画にも影響が広がっている。
県は10月下旬に防衛省へ支援を要請し、政府は関係閣僚会議で被害対策の強化を指示した。法令上の整理を踏まえ、訓練の枠内で受託できる自衛隊法100条を使い、輸送などの民生協力として実施する枠組みが選ばれた。費用は原則として県が負担し、隊員の給与や糧食費などは除外される。
谷筋を進む箱わなは、過密な現場の時間を少し取り戻すための道具に見えた。慣れた足取りの猟友会と、規律正しい隊列の自衛隊。役割は違っても、住民の不安を軽くするという一点で足並みはそろっている。被害の連鎖を断つ試みは、地道な一歩から始まっている。
