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白い防護服が早朝の鶏舎に並び、静かな白老の空気が少し張り詰めた。2025年10月22日、北海道は白老町の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの感染確認を発表した。今季、国内の養鶏場で初の確認と受け止められ、冬の入口で緊張が走る。封じ込めと供給の揺らぎ、その両方に目を配る局面が広がっている。
白老で今季初の確認、封じ込めの現場
発生が確認された養鶏場では、迅速な殺処分や消毒が段取りよく進むとみられる。道の発表によれば対象は大規模で、周辺農場にも影響が及ぶ構図だ。一部報道では採卵鶏の大量殺処分に加え、発生地点から半径10キロ以内の養鶏場に対し移動や搬出の制限が敷かれると伝えられている。防疫網を一気に立ち上げ、ウイルスの外への漏出を断つ狙いが浮かぶ。
家畜伝染病予防法に基づく基本動作は明快である。原則として発生農場から半径3キロは移動制限、3キロ超から10キロは搬出制限の対象となり、清掃・消毒の徹底と経過観察を経て段階的に解除される。過去の事例でも、殺処分の完了日から一定期間が過ぎると順次制限が緩む運びになってきた。今回も同様の手順で、地域の負担を抑えながら封じ込めを進める流れが想定される。
消費者への影響でまず気になるのは安全性だが、鶏肉や鶏卵を食べることで人が感染する可能性は現状ないとされている。国の情報は繰り返し「科学的知見に基づく冷静な対応」を呼びかけ、過度な買いだめや風評を避けるよう求めてきた。現場取材の方法にも配慮が必要で、上空からの撮影などは作業の妨げとなりうる。防疫の最前線を乱さないことが、早期収束への近道である。
卵価と生活への波紋、冬へ向けた備え
今季初の確認は、供給と価格の見通しにも影を落とす。発生地域での出荷調整や移動・搬出の制限は、短期的に物流の余白を狭める可能性がある。昨季までの連続発生で、産地の負担と現場の疲労は積み重なってきた。業界内では年末商戦期の需給逼迫を警戒する声が早くも出始め、鶏卵価格のぶれをどう抑えるかが課題として浮上している。買い急ぎが波紋を広げかねない点にも注意が要る。
政府と自治体の対応は、迅速な封じ込めと情報共有が軸になる。国の防疫対策本部は、発生の都度、監視体制の強化や飼養衛生管理の徹底を通知してきた。今後、全国どこで発生してもおかしくないとの前提で、畜産現場は防鳥ネットや靴底消毒の徹底、飼養密度の見直しなど、基本の点検を重ねる段階に入る。白老での事例は、その必要性を静かに、しかし強く思い起こさせる。
北海道は22日に対策本部会議を開き、国との連携を確認したとされる。殺処分や制限区域の設定は地域に重い決断を迫るが、短期の痛みを受け入れて拡大を断つことが長期の安定につながる。現時点で確認されている範囲では、標準的な手順に沿って対応が進む見立てだ。生活者は過度に構えず、正確な情報に基づいて日常を整えることが肝要である。冬の入口で試されるのは、社会全体の落ち着きと連帯感だと映る。
