ホンジュラス大統領選、台湾再接近を掲げる候補が僅差で先行

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2025.12.01

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中米ホンジュラスで11月30日、任期満了に伴う大統領選が行われた。2023年に台湾と断交し中国と国交を結んだカストロ政権の路線を続けるのか、それとも対台湾関係を立て直すのかが大きな争点だ。開票が進むなか、台湾との再接近を訴える保守系候補アスフラ氏が僅差で先行しているが、最終結果はまだ見通せない。

外交転換の陰で揺れる漁業と若者たち

カストロ大統領が台湾と断交し中国と国交を結んだのは2023年3月だ。外交の舵を切った結果、台湾向けのエビ輸出はその後67％減り、およそ1万4000人分の雇用が失われたとされる。沿岸部では、かつて台湾向け出荷に携わっていた養殖業者が、販路を失って借金返済に追われる状況も伝えられている。

外交の変化は教室にも及んだ。台湾政府の奨学金で学んでいたホンジュラス人学生約170人は、断交に伴い支援を打ち切られた。家族の多くは国内に十分な大学進学先を持たず、仕送りで生活を支えていた。今回の選挙では、こうした若者や家族が「どの国と組むか」が自分たちの進学や就職の可否に直結すると受け止めている。

こうした打撃を踏まえ、野党候補の一部は台湾との外交関係を復活させると公約している。中国との新たな協力で雇用を増やすと訴える与党陣営と、かつての支援国との関係再建を求める産業・学生層とのあいだで、社会の分断は静かに広がっている。

台湾喪失が映す中米の力学

ホンジュラスは長年、台湾と正式な国交を持つ少数の国のひとつだったが、2023年に「一つの中国」原則を認めて北京との関係に切り替えた。同様の転換はパナマやエルサルバドルなど中米諸国でも相次ぎ、台湾と国交を維持する国は十数か国まで減っている。

背景には、中国がインフラ投資や債務支援を掲げて各国に接近してきた事情がある。ホンジュラスでもダム建設計画などを通じて中国資本が流入したが、期待された規模の新規投資や雇用が十分に生まれていないとの指摘もある。安価な中国製品の流入で、中小商店の売上が大きく落ち込んだとの報告もあり、外交転換の評価は一枚岩ではない。

一方、台湾側は大統領選の行方を注意深く見守り、関係修復の余地があれば柔軟に対応する姿勢を示している。米中対立が深まるなか、中米の小国がどの首都と距離を縮めるかは、安全保障や貿易ルートにも波及する。ホンジュラスの一票は、台湾の外交的な孤立度合いや、中国の中南米での影響力の度合いを測る試金石にもなっている。

次期政権が選ぶ「どの国と組むか」

今回の大統領選には、与党リブレ党のモンカダ候補、保守系国民党のアスフラ候補、中道系のナスララ候補らが立候補した。モンカダ氏はカストロ政権の路線を引き継ぎ、中国との関係を軸に据える姿勢とされる。一方、アスフラ氏とナスララ氏は、ともに台湾との国交回復を掲げ、中国との協定見直しにも言及してきた。

開票途中の12月1日時点では、アスフラ氏が4割強の得票でわずかにリードし、ナスララ氏がこれを追い、与党候補は苦戦している。アスフラ氏の台湾寄り発言に対しては、在ホンジュラス中国大使館が強い抗議声明を出し、「一つの中国」原則を順守するよう迫った。次期大統領は、中国からの圧力と、台湾や米国との連携を望む国内世論の板挟みになる可能性が高い。

誰が勝っても、失われた輸出や奨学金をどう取り戻すか、地方の雇用をどう支えるかという課題は残る。大国間の綱引きではなく、漁業や若者の生活を軸にどの国と組むのか。その答えが、ホンジュラスの次の4年を左右する。

選択の結果を最初に受け止めるのは、国境の向こうの大国ではなく、国内の市民一人ひとりである。