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サイレンが途切れなく鳴り続ける中、黒い煙が高層住宅群を覆っていた。香港北部・大埔区の住宅団地「宏福苑」で2025年11月26日午後、大規模な火災が起き、27日朝までに消防士1人を含む44人の死亡が確認された。重体の負傷者は40人余り、連絡が取れない住民はおよそ279人に上るとされ、今も行方の分からない人を探す家族の列が続いている。
なぜ高層住宅群でここまで被害が広がったのか
火元とみられているのは、外壁補修のために組まれていた竹製の足場と、その外側を覆う防護ネットだ。午後3時ごろ、この部分が炎に包まれると、強い風にあおられて火が一気に上へ走り、団地8棟のうち7棟へ燃え広がった。1980年代に建てられた宏福苑には約2000戸、約4000人が暮らしており、工事中の外壁が巨大な可燃性の皮膚のように団地全体をつないでいたとみられる。
建物内部の温度は高く、崩れ落ちる足場や外壁材も相次いだため、消防隊は長時間、内部進入よりも外側からの放水に頼らざるを得なかった。火災は17時間以上続き、一部の棟では27日になっても完全な消火には至っていないとされる。香港は厳しい建築基準で知られ、高層火災の大規模な犠牲は戦後ほとんど例がなかったが、今回は1996年に41人が亡くなったガーリービル火災を上回る戦後最悪級の被害になる可能性が指摘されている。
生活の場を失った人々と、問われる工事の安全性
亡くなった人の中には、上層階で取り残された住民や、救助活動中に倒れた消防士も含まれる。負傷者は数十人に達し、その多くが重いけがを負っている。行方不明者の安否確認が続く一方で、およそ700人の住民が学校などに設けられた臨時の避難所で夜を過ごした。団地には高齢者や体の不自由な人も多く、煙と炎の中で階段を下りきれなかった人がいたという証言も伝えられている。
警察は外壁工事を請け負っていた会社の責任者ら3人を誤殺容疑などで逮捕した。窓周りに貼られた発泡スチロール製ボードや防護ネットなど、可燃性の資材が安全基準を満たしていなかった疑いがあり、当局は設計や監督の体制も含めて調べている。香港では老朽化した公営住宅の改修が各地で進むが、費用や工期の圧力が安全を後回しにしてこなかったか、今回の捜査はその問いにも向き合うことになる。まだ煙のにおいが残る団地の前で、住民たちは失われた日常の重さを静かに見つめている。
